2008年9月10日(水)「しんぶん赤旗」

主張

ミニマムアクセス米

破たんした「義務」的輸入


 国民が必要としていないにもかかわらず、政府は毎年、外国米を大量に輸入しています。食の安全と食料自給率引き上げが求められる中、ミニマムアクセス(MA)米と呼ぶ外国米の輸入に、国民の目が一段と厳しくなっています。

 MA米の輸入が始まって十三年、制度の破たんは国内、国際の両面で明らかになっています。政府はMA米の輸入を中止するとともに、輸入を押し付ける世界貿易機関(WTO)協定の抜本改定を追求すべきです。

「全量輸入」できず

 MAは一九九三年、WTOの前身であるGATT(関税貿易一般協定)のウルグアイ・ラウンド交渉で導入されました。農産物のうち日本が唯一自給できるコメの市場に風穴を開けるものでした。

 当時の政府が国産米の需給に影響を与えないと約束し、実際に外国米の需要がほとんどないこともあって、多くが倉庫に積み上げられ、管理に多額の税金が投入されてきました。半面でMA米は一部の外食産業や加工用に使われ、「コメ余り」の要因になってきました。そのもとで、政府は農家に厳しい減反を強制してきたのです。

 各党がMA米の輸入を「仕方ない」と受け入れた一方で、日本共産党は食料自給率を引き上げる立場からコメ市場の開放に一貫して反対してきました。WTO協定を精査して、MAは「輸入機会」を提供するとの約束にすぎず、その全量を買い入れる「義務」はないことを明らかにし、政府に輸入の中止を迫ってきました。

 政府は、コメは「国家貿易」だから全量を買い入れる「義務」があると主張してきました。ところが今年、全量輸入が「義務」だという政府の主張が崩れました。

 農水省は二〇〇七年度もMA米を全量(七十七万トン)輸入する予定でした。しかし、コメの国際価格が急騰する中で、業者が希望する買い取り価格では入札が成立しない事態が生じたのです。農水省は結局、〇七年度のMA米の輸入を約七万トン残して打ち切ってしまいました。これは政府の判断で輸入量を変えられることを、政府自らが明らかにしたものです。

 MA米輸入を見直すべきだとの主張は、農業関係者と広範な国民、さらに農水省の官僚にも広まってきました。今回の農水省決定を報じたメディアが、MA米不要論の高まりを指摘したのも、世論の変化を反映しています。それにもかかわらず、なんらの検討もしないまま〇八年度の輸入を強行する農水省の姿勢は許されません。

 世界的な食料危機の中、コメ不足から暴動が起きた国さえあります。日本が不要なコメを輸入し続けることは、途上国の人びとの貴重な食料を横取りするもので、道理がありません。政府は、MA米輸入が「義務」でないことを認め、きっぱりと中止すべきです。

WTO協定の改定を

 世界的な食料危機に直面して、各国はいま食料自給率を引き上げる必要に迫られています。WTOのドーハ・ラウンド交渉が七月に決裂した背景には、市場開放の押し付けに対する各国の批判があります。

 自給率が先進国中で最低の日本は特段の引き上げ努力が必要です。そのために、WTO協定を抜本的に改定し、食料主権を確保することが不可欠です。



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