2008年9月14日(日)「しんぶん赤旗」

汚染米 その背景には

輸入に固執の政府

安全も置き去り


 農薬やカビ毒に汚染された輸入米が食用として流通し、焼酎や菓子、給食にまで使用されていたことに、国民の不安が広がっています。非食用の汚染米を食用と偽り販売した企業の責任は重大です。同時に、汚染米を廃棄せず流通を容認してきた政府の責任が問われます。(浦野恵子)


 大阪市の米加工販売業者「三笠フーズ」が発がん性の強いカビ毒や農薬に汚染された輸入米を食用と偽って酒造メーカーなどに卸していたことが公表されたのが今月五日です。その後、愛知県の「浅井」や「太田産業」も、汚染米を食用として販売していることがわかりました。

 三笠フーズの経路だけでも十四府県にまたがって汚染米が流通しています。農水省は、これら三社を含む二十社を対象に、八日から立ち入り調査を行っていますが、今後、汚染の広がりは計りしれません。

国の公認

 厚生労働省の担当者は、基準値を超える農薬やカビ毒に汚染された米の販売は、「食品衛生法違反であり、廃棄または積み戻しをすべきものだ」と話します。

 廃棄や積み戻し(返送)をしていれば、防げたはずの汚染米の流通がなぜ、ここまで広がったのか。

 三笠フーズにカビ発生のタイ米を販売した住友商事は、「(厚生労働省の検疫から指摘を受けた)タイ米の処理について、農林水産省の了解を得たうえで、三笠フーズに対し『工業用糊加工品』に用途を限定することを条件に販売した」と経緯をのべています。

 農水省は、食品衛生法に違反する輸入米の流通を公認してきました。その数量は一九九六―二〇〇七年までで一万六百七十七トンに及びます。

 「汚染米は国内流通を禁止せよ」「違反米を非食用として輸入することはやめよ」との国民の声や日本共産党国会議員団の申し入れを受けて、太田誠一農水相は十日、輸入時の検疫で基準を超える残留農薬が判明した場合、輸出元に「返送すること」など、原則として汚染米を流通させないとの方針を固めました。当然のことです。

責任放棄

 一方で、太田農水相は、汚染米への不安が広がっていることについて、「人体に影響がないことは自信をもっていえる。だからあんまりじたばた騒いでいない」と発言し、農水省の責任を棚上げにしています。

 輸入米が汚染されているとわかっていながら、廃棄もせず流通させた大本の責任を投げ捨てた許しがたい態度です。

 日本政府は、年間七十七万トンもの輸入米(ミニマムアクセス米)を受け入れています。日本国内には必要もないのにWTO(世界貿易機関)の取り決めで押し付けられているもので、日本の年間消費量の8・4%に相当します。この輸入米が膨大な在庫となって国内産米を圧迫し、米価下落の大きな要因ともなっています。


徹底審議を

 日本共産党の紙智子参院議員の話 今回の汚染米事件は、政府が「義務米」といって何が何でも毎年77万トンの輸入米を確保しようとしているなかで起こったことです。政府は、輸入があたかもWTO農業協定上の「義務」であるかのようにいいますが、本来輸入は義務ではありません。無理を重ねるなかで国民の命や健康が脅かされています。徹底的な事実究明と責任の糾明、再発の防止が必要であり、国会で徹底論議すべきです。

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