2008年10月17日(金)「しんぶん赤旗」
主張
農薬混入インゲン
原因の徹底究明が安全の前提
中国から輸入した冷凍インゲンを口にした東京都内の女性が一時入院し、インゲンから基準の三万倍を超す有機リン系の殺虫剤ジクロルボスが検出されました。千葉県でも同じ商品を食べた男女から異常を訴える報告があり、問題は広がりを見せています。
輸入食品をめぐってはつい最近も、中国産の輸入ギョーザでの農薬混入問題や、「ミニマムアクセス米」として輸入されたコメでの汚染米転売が問題になったばかりです。国民の食の安全のため原因の徹底究明は不可欠です。
人為的混入の疑いが濃い
厚生労働省などの発表によると、東京都内の女性は冷凍インゲンを調理中口にしたところ異味を感じたので吐き出しました。舌のしびれとむかつきで病院に一時入院、残ったインゲンを東京都健康安全研究センターで調べたところ、基準を超えるジクロルボスが検出されました。
千葉県の男女が異常を訴えた製品からはこれまでの調査で、ジクロルボスは検出されていません。
問題になった冷凍インゲンは、大手食品業者のニチレイフーズが中国から輸入し、イトーヨーカドーや系列のヨークマートで販売されていたものです。インゲンそのものは中国の黒龍江省で栽培、加熱、冷凍して仮包装され、山東省に運ばれて袋詰めされました。検出されたジクロルボスが多いことから農薬が残留した可能性は低くどの段階かで人為的に混入された可能性が高いと見られています。
ジクロルボスは日本でも農薬に使われている殺虫剤です。発がん性があり、一度に大量に摂取すると吐き気やけいれん、下痢などの症状が起きます。インゲンの残留基準は〇・二ppmで、東京都で検出された六九〇〇ppmは基準値の三万四千五百倍に当たります。
いまのところ、混入が中国でおこなわれたのか、日本でおこなわれたのかもわかりません。しかし、国民が安心して食品を口にできるよう、日中両国での徹底した調査が求められます。
中国製冷凍ギョーザの農薬混入問題では、中国国内での混入だったことはほぼ断定されたのに、いぜん真相は突き止められていません。インゲンの場合は中国国内での混入とは断定できませんが、ギョーザ問題とあわせ、徹底調査が不可欠です。
インゲンが入っていた袋には穴などは開いておらず、一方、中国側の企業はどの段階でもジクロルボスの使用や保管はなかったとしています。
それなら製造段階で誰かが持ち込んだのか、輸出のために出荷され日本のスーパーで販売、調理されるまでに誰かが混入させたのか、調査はあらゆる可能性についておこなわれるべきです。
輸入食品の安全対策を
今回のインゲンの農薬混入は輸入が原因だと断定することはまだできませんが、輸入食品をめぐり問題が相次いでいることは、いずれにせよ相手がどの国であれ、輸入食品への安全対策が抜本的に強化されなければならないことを浮き彫りにしています。
輸入食品への検査体制を強化し、水際での検査率を50%に引き上げることや原産地表示を徹底することなどが緊急に必要です。根本的には食料自給率を向上させ、「安全な食料は日本の大地から」の原則を打ち立てていくことです。
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