2008年10月23日(木)「しんぶん赤旗」
国際協調・内需拡大で対応
世界金融危機に中国
米の借金体質も批判
米国発の世界金融危機に対して中国は、米国の借金経済体質を批判しつつ、各国との協調で乗り切ろうとしています。減速する国内経済に対しては内需拡大で打開をねらいます。(北京=山田俊英)
中国共産党中央党学校の理論紙、学習時報は国際金融危機の中国への影響について、(1)金融機関が保有する海外資産の損失(2)海外の株式市場で上場する中国企業の株価の低下(3)外貨準備の安全性低下(4)輸出の減速(5)流動性の収縮―の五つをあげました。
市場開放がいまほどでなく、打撃の少なかった一九九七年のアジア通貨危機と比べると大きな違いです。
実体経済が減速
実体経済では今年七―九月期の国内総生産(GDP)が前年同期比9%増。一―三月期の10・6%、四―六月期の10・1%から一段と減速しました。
GDP全体の四分の一近くを占める長江デルタ(上海市、江蘇省、浙江省)では工業生産、輸出とも「国際経済環境の影響が顕著」(杜鷹・国家発展改革委員会副主任)です。上海では今年一―九月期の工業生産の伸びが前年同期比11・5%だったのに九月は前年同月比6%です。
やはり輸出産業の拠点である広東省では東莞市のおもちゃ工場倒産で数千人の労働者が一時、鎮(町)政府に未払い賃金の支払いを求めて詰めかけ、鎮政府が立て替えて払う事態になりました。
消費拡大へ支援
共産党は今月開いた第十七期第三回中央委員会総会で、「国内需要とりわけ消費需要の拡大に力を入れる」と決定。金融・資本市場の安定維持も強調しました。政府は十七日、農民、中小企業支援を中心にした年内の対策を打ち出し、内需喚起へ取り組みを強めました。来年の方針は年内に開かれる中央経済工作会議で議論されます。
国連総会出席のため九月に訪米した温家宝首相はビジネス界との会合で「米国は借金して消費しているが、中国は金を貯め込んで消費しない。どちらも問題だ」と述べ、米国の「双子の赤字」や住宅バブルを批判し、中国自身については内需拡大を強調しました。
十月十四日、金融危機について英国のブラウン首相と電話会談した温首相は、「金融と実体経済、貯蓄と消費、金融刷新と監視の関係を正しく処理しなければならない」と主張し、金融市場の安定を先進国に迫りました。
二十四、二十五両日に開かれるアジア欧州会議(ASEM)首脳会合や、十二月の米中戦略経済対話が欧米諸国との協議の場となります。欧米諸国が提案した金融危機対策の首脳会議開催については、「途上国の利益と懸念を十分尊重すべきだ」(外務省報道官)と、大国主導に警戒感を示しています。
楊潔篪(ようけつち)外相は新華社通信のインタビューで「九七年のアジア通貨危機のとき、中国は人民元を切り下げず、危機の拡大を防いだ」と語り、途上国自身の役割を強調しました。
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