2008年11月8日(土)「しんぶん赤旗」
輸入米、落札ゼロ
農水省 汚染防止策なく強行
農水省は七日、汚染米事件で約二カ月間停止していた輸入米の入札を再開しました。輸入商社の売却予定価格が高すぎるなどが原因で、政府が買い入れを予定していた五万一千トンの全量が落札できませんでした。
輸入米の入札再開は、「汚染米事件の根本的な解明や防止策もないのに、ミニマムアクセス米の輸入を強行するのは許せない」という、国民の多数の声に耳を傾けずに強行したものです。
この日の入札は、加工用の輸入米(一般米)の二〇〇八年度第二回の入札。政府の予定買い入れ数量は、タイ産や米国産、グローバル・テンダー(産地の国を指定しない外国産米)の合計五万一千トンでした。
輸入米の入札は、世界的な食料不足と金融投機の影響で価格が高騰し、二〇〇七年度最後の一般米の入札(〇八年四月二十二日実施)でも予定数量の全量を落札できませんでした。やっと再開した〇八年度第一回の一般米の入札(九月五日実施)も、予定数量の七割程度しか落札できず、落札価格も過去最高値をつけていました。
解説
食の安全求める声反映
輸入米の入札の全量が落札できなかった背景には、汚染米事件で「食の安心・安全」を求める国民の「コメ輸入はやめよ」という声が広がり、コメの輸入条件が厳しくなり、商社が見込むコスト(費用)が膨らんだことなどがあります。また、依然として続く世界的な食料不足によるコメ価格高騰もあります。
このため、輸入商社が入札で見込んだ売却予定価格が、政府の買い入れ予定価格を上回り、落札しなかったものと思われます。
しかし、政府が今回の事態にこりず、輸入商社のぼろもうけのために、この先また入札を続けるとすれば、事態はいっそう深刻になります。三菱商事など日本の大手商社五社は、二〇〇八年度上期の連結決算で、純利益が過去最高を記録しています。
日本政府が買う価格が高くなればなるほど、食料不足に苦しむ途上国の国民から、輸入商社が金の力でさらにその食料を奪っていくことになります。
政府・農水省は、今回の全量不落札という事態をまじめに受け止め、ミニマムアクセス米の輸入をきっぱり中止すべきです。(今田真人)
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