2010年1月21日(木)「しんぶん赤旗」

新しい情勢にどうのぞむか

――「政治とカネ」から日米関係まで

BSフジ 志位委員長、大いに語る


 日本共産党の志位和夫委員長が生出演した19日夜放送のBSフジ報道番組「PRIME NEWS(プライムニュース)」。「政治とカネ」の問題から日米関係、経済問題、日本共産党第25回大会まで話題は多岐にわたり、志位氏は司会のフジテレビ報道局政治部の反町理氏と同元テレビアナウンサーの八木亜希子氏、解説役の若松誠・フジテレビ解説委員長と語り合いました。


小沢氏疑惑

国会が国政調査権の発動を
企業・団体献金禁止と政党助成金の廃止にふみ出せ

 冒頭、小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体をめぐる土地購入疑惑をどうみるかがテーマになりました。

 志位氏は「一番の核心は、土地購入費の中に『ゼネコン・マネー』が原資として含まれていたのではないかという疑惑だ」とのべ、「しんぶん赤旗」の調査で、公共事業を受注した中堅ゼネコン・水谷建設の幹部が、小沢氏の元秘書で民主党衆院議員の石川知裕容疑者らに計1億円を手渡したという水谷建設関係者の証言が得られたと指摘。「公共事業は国民の税金でやっている仕事ですから、国民の税金の一部が小沢さんの側に流れたという疑惑です。非常に深刻な問題です」として、国会が国政調査権を発動し、疑惑究明を行うことを求めました。(詳報

 さらに志位氏は「こうした問題が何度も繰り返される一番根っこには、企業・団体献金を温存してきたという問題がある。このさい、即時禁止に踏み切ることが大事だ」と強調。また、新生党や自由党の解党のさいの残余資金22億円―その原資に政党助成金が含まれている疑惑も問われているとのべ、「政党助成金のあり方も見直し、撤廃すべきです」と主張しました。

 これに対し「たしか政党助成金は数年以内に企業・団体献金を禁止するという約束で(1995年に)導入したと思うんですが…」と反町氏。志位氏は「そうです。政党助成金を出す代わりに、5年以内に企業献金は『見直す』ということで、始まったものなのです。ところが企業献金はもらい続ける。政党助成金ももらう。“二重取り”をやっているというのはおかしな話です」と批判しました。

情勢の変化

保守の方々とも広がる対話
自民党政治にかわる「政治の中身」が問われる新しい時代に

 「お金のことに関しては共産党はつねにクリーンだと訴えてらっしゃいますが、なかなか支持があつまらないことについてはどう……」。八木氏の問いかけで日本共産党が国民にどう受けとめられているのかがテーマになりました。

 志位 この間の動きからすれば、それまで私たちと接点のなかった方々とずいぶんおつきあいが広がってきました。私も初めてJA全中の大会に招待されまして。

 若松 大喝さいだったんですって。

 志位 ええ。温かく迎えていただきました。そして、私たちの党大会にもJA全中の専務理事の方が来賓としておみえになって、こちらも大喝さいになりました。これまで保守の基盤といわれていた団体にもずいぶん大きな変化がありますね。

 それから全国森林組合の大会にも初めて呼ばれてあいさつする機会がありました。あらためて調べてみて、ほんとうに林業は重要だなと思いました。ドイツでは自動車産業で働く人より林業やその関連産業で働く人のほうが多いんですね。国土と環境を守り、雇用を支えているんです。森林組合の方々ともずいぶん対話が進んでいます。

 若松氏が、「(この間の)国政選挙で議席が伸びていない。比例も400万票台。これはいかがですか」と質問したことに対し、志位氏はこう応じました。

 志位 この10年間は、私たちにとっては、ある意味で難しい時期だったと思います。どう難しかったかというと、「自民か、民主か」というキャンペーンがはられて、そのどちらかしか選択肢はないという形で、共産党を蚊帳の外に置いてしまおうという流れが非常に強まった時期でした。そういうなかで私たち共産党は、日本をこう変えるというビジョンを示して、踏みとどまったというところが大事だと思うんです。

 しかし「自民か、民主か」でやってきた結果は、自民党は壊滅的な批判を受けて先がないような実態になってきている。総選挙で国民がくだした審判は、日本の政治を前に動かす歴史的な審判だったと思います。そうなるともう、「自民か、民主か」に単純になってきていないですよね。自民党政治に代わって、どういう日本をつくるかという「政治の中身」が問われる新しい時代に入ってきた。これまでの自民党政治の特徴だった、外交はアメリカまかせ、内政は財界中心という枠組みから抜け出して、「国民が主人公」の新しい日本をつくろうという私たちのビジョンが、(国民の中に)広がる状況が、いま新しく始まったところだと思います。

どうする日米関係

アメリカを事実に即し複眼でとらえる
党大会報告は真の友好を願う立場からのもの

 続いて、共産党大会で解明した「日米関係」論が話題になりました。若松氏は、党ホームページからダウンロードして印刷した37ページの中央委員会報告を手に、「志位委員長は大会報告のなかで『私たちはアメリカとの真の友好関係を望んでいる』とのべた。従来の対米批判一辺倒とは多少違って、現実柔軟路線を具体化されたものなのかなと受けとめました」と語り、「アメリカとの関係は具体的にどうしていくつもりですか」と質問。志位氏はこう応じました。

 「私たちの立場は、アメリカという国であっても、やることがみんな悪い、帝国主義だから全部間違っていると頭ごなしにみない。事実に即し、前向きの動きがおこったら促進するし、協力もする。しかし間違ったことには大いに批判するし対決もする。いわば複眼でアメリカをとらえていこうと確認してきたんです」

 オバマ米大統領が、昨年4月、チェコ・プラハでのべた「核兵器のない世界」を追求するとの宣言に対しては、それを現実のものにするために党として働きかけてきたことを紹介。一方、日米関係をみると、支配・従属の関係が変わっていないことを指摘し、「対等なパートナー」というなら、米国内では決して許されない在日米軍の危険な実態の横行、日米地位協定による特権などを正すべきではないかということを、党大会報告で、米国政府へのメッセージとしてのべたことを紹介し、これは「反米」の立場でなく、本当の友好を願う立場からのものだとのべました。

 そして、軍事同盟は、21世紀の世界で「前世紀の遺物」になっていること、全方位で周辺諸国、世界の国々と友好関係をつくっていくのが日本共産党の平和外交だとのべました。

安保、自衛隊をどうする

国民多数の合意ですすむ
“紛争を戦争にしない”が世界の流れ

 「周辺諸国の有事にはどう対応していくべきか」(八木氏)の質問に対して、志位氏は次のように答えました。

 志位 いま周辺諸国との関係で、不安定な要素が残っていることになると、やはり北朝鮮問題です。どう解決するかといったら、「6カ国協議」という枠組みが最善、唯一の道だと思っています。

 反町 でもいま機能しているとは思えませんよ。

 志位 ええ。でも、この間、米国、中国などが働きかけて再開の方向も出てきつつある。この枠組みで解決するということは非常に重要です。「6カ国協議」が再開されて問題解決が進展し、核、拉致、過去の清算などが解決されて日朝関係もまともになりますと、北東アジア地域に軍事的な不安定要因というのは残りませんよ。そういう平和の環境をつくっていく努力と同時並行で、安保条約をなくす国民の合意をつくっていく。安保条約をなくすのは、国民の大多数が「安保がなくてもいい」とならないとなくせるものではありませんから、そういう多数の合意が必要になってきます。その合意をつくるうえでも、いまいったように北東アジアの平和的な環境を成熟させるための外交的努力が必要だと思います。

 反町 非武装・非同盟ということもあるわけですよね。

 志位 非武装というのは、私たちはこの問題を整理していまして、かりに安保条約をなくすとしても、そのときに自衛隊は一緒になくすことにはならないと(の立場です)。

 八木 その場合はどういうふうに…。

 志位 私たちは、自衛隊というのは憲法9条にてらせば憲法違反の軍隊ですから、いずれは解消していく必要があると。しかし、これも国民の合意が必要です。国民のみんなが、「自衛隊がなくても、憲法9条どおりにしても、もう日本は大丈夫だ、安心だ」という合意がなければ自衛隊の解消というわけにはいきません。ですから、私たちが政権に入って安保条約を廃棄した場合に、自衛隊は、まずは軍縮への切り替えをやりながら、国民の合意で段階的に憲法9条の完全実施に向かうということを、私たちは考えています。

 反町 武力がなくても国が守れるという理解ですか。

 志位 世界の全体の大勢をよくみますと、人類社会から紛争はなくせなくても、紛争を戦争にしないことはできるという確信が、世界中に広がりつつあると思うんですよ。たとえば、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心に東南アジア友好協力条約(TAC)がつくられ、紛争の平和解決という憲法9条と共通する理念を掲げて大きく広がっている。ユーラシア大陸のほとんど、最近はEU(欧州連合)、アメリカも加入するところまで広がっています。こうして、世界全体が、もめごとがおこっても、戦争ではなくて、平和的・外交的に解決する方向に向かっている。21世紀はそういう時代だと考えています。

「国際競争力」論どうみる

欧州の企業は日本より重い負担
人間を大事にしない企業は競争力を失う

 志位氏は、通常国会では、2010年度政府予算案の抜本的な組み替えを提案する考えを表明。軍事費、大企業・大資産家への優遇税制にメスを入れ、暮らしに手厚い予算にしたいとのべました。また、政府が検討している労働者派遣法改正案は、製造業派遣について常用型派遣を「禁止の例外」とし、実施時期を3〜5年先にする“大穴”が開いていると批判し、抜け穴をふさぐとともにすみやかな実施をもとめる修正を提起したいとのべました。

 これに関連し若松氏は「企業が国際競争力を失ったら日本としても活力を失っていくように思える」と質問。志位氏は次のように答えました。

 志位 たとえば日本の大企業とヨーロッパの大企業が払っている税金・社会保険料のどちらが重いかという比較を政府のデータでやってみますと、ヨーロッパの方がずっと重いんですよ。税だけで比べますとそんなに違いがなくても、社会保険料の負担が日本の場合は、少ないですからね。だいたい、フランスは日本の1・3倍、ドイツは1・2倍、日本より重いんです。それでちゃんと世界の舞台で競争をやっているわけですね。財界の方々は口を開くと「国際競争力だ」といって、「海外に逃げちゃうぞ」という話をするんだけれども、私は、ヨーロッパだってちゃんと負担しながらやっているじゃないですかということをいいたい。

 それから派遣労働のように、人間をモノのように「使い捨て」にするというやり方をつづけますと、企業にとっても本当の意味での活力がなくなっていきますよ。一生懸命働いて、技術もしっかり磨いていこう、伝承もしていこう、工夫もしていこう、こういうふうになりませんよ。そういう企業というのは、短期的利益はあがるかもしれないけれども、中長期的には先がない。結局、人間を大事にしない企業というのは、競争力を失うと思いますね。

政府予算案

軍事費と大企業・大資産家優遇の「二つの聖域」にメスをいれれば、財源はつくれる

 番組では最後に、視聴者からのメールが紹介されました。このなかで「民主党より自民党より未来がみえる予算が組めるでしょうか」(愛知県の30代の会社員)の質問に、志位氏は次のように答えました。

 志位 政府予算案で、何で44・3兆円もの借金(国債)になるのか、1年限りの「埋蔵金」に8兆円も頼る予算になるのかというと、4兆8000億円の軍事費に手をつけようとしない。それから大企業や大資産家への優遇税制に手をつけようとしない。やはりこの「二つの聖域」をつくっているからだと思うんですね。

 日本では、株の取引に10%しか税金がかからないと外国特派員協会で話しましたら、みんなびっくりして聞きますね。フランスは30%、アメリカは25%から30%に、イギリスも30%台から40%台にするという動きですから。大金持ちの株取引にきちんと課税するだけでも、元の20%に戻しただけで7000億円から8000億円(の財源は)出てきますよ。30%にしたら1兆円以上の財源がつくれる。イギリスなどで株取引の課税を強化しているのは、株取引の投機でもうけることは経済全体を投機化して不健全にさせるから、それを抑えるという意味もあると思います。そういうことをぴしっとやれば財源をつくれるわけですね。

 若松氏は「野党の人がしっかりしてもらわないと政治が引き締まっていかない。志位さんにも出ていただいて、またお話をうかがうことを期待しています」とのべました。



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