日本共産党

2003年9月2日(火)「しんぶん赤旗」

チュニジアの七日間(9)

中央委員会議長 不破哲三

「大志」の大会(下)


外交路線にはわが党と多くの接近点がある

 外交路線の部分についていえば、ベンアリ演説には、わが党の立場との多くの接近点、共通点があった。

 ―民族と国家の主権の尊重、内部問題不干渉、国際的合法性と国連憲章にもとづく国家間の紛争の解決。

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大会会場と日本共産党代表団。左から緒方さん、森原さん、不破さん。右端はハマムさん=7月28日、チュニス

 ―中東問題では、独立国家の樹立をめざすパレスチナ人民への支持。

 ―イラクの主権尊重、領土保全の維持、などなどである。

 チュニジア外交の国際的な広がりという問題では、非同盟運動とか、イスラム世界全体の問題があまり前面に出ず、マグレブ連合(マグレブとは「日が沈む地」というアラビア語で、チュニジア、アルジェリア、モロッコなど地中海に面したアフリカ大陸北西部の国ぐにを指す)やアフリカ連合、アラブとアフリカの連帯、地中海諸国の協力、欧州連合との協力など、地域的な連帯のきずなの拡大に、主要な力点がおかれていたのが、印象的だった。

 外交問題では、大会後に、ベンヤヒア外相とよりたちいって話し合う機会があったので、詳細はそこに譲ることにしたい。

女性の最低比率25%に大きな拍手

 ベンアリ演説には、経済やその発展計画にたいする数字はほとんど出てこない。何度も繰り返された唯一の数字は、25%という数字であり、その度に会場から歓声があがった。大統領が50%と言いまちがえた時には(すぐ訂正したが)、笑いとともに、より大きな歓声で迎えられた。

 なんの数字かというと、党のさまざまなレベルで、女性が占めるべき最小限の比率を示す数字である。これまでは、大会代議員や中央委員会の構成について25%以上という基準が決められていたが、これからは、国会議員や地方議員の候補者についても、女性の比率を25%以上に高めようというのが、新しい提案だった。

 25%基準を実現するため、選挙をやって当選ラインを越えた女性が25%に満たない場合、その数だけ男性の当選者の数を削り、次点、次々点にあたる女性を繰り上げ当選させるのだという。

 イスラム国家のなかには、いまでも、女性が人前では顔をベールでおおうなど、女性の社会的活動への制限条件の多い国が少なからずある。そのなかで、チュニジアは、建国の当初から、一夫多妻の禁止、女性の選挙権をはじめ、女性の地位向上の方針をただちに決めるなど、先進的な道を走ってきた国だが、それをいっそう加速することに力をそそいでいるのだろうし、新しい国づくり、社会づくりへの意欲の表れといえよう。

大会会場外の待ち時間に

 ベンアリ演説のあと、外国および国内の来賓あいさつで午前の議事は終わり、私たちは会場の外に出た。入場の時とは違って、文字通りぎらぎらと照りつける暑さである。日陰を探しながら、スペインの統一左翼で対外担当の責任者であるブラボ氏やポルトガル社会民主党のアルナウ書記長、パレスチナ解放機構の代表などと声をかわしながら、帰りの大型バスを待つ。

 まわりを見ると、少し離れたところに、頭の髪にも大きな蝶(ちょう)の羽を飾り、民族衣装を身にまとった大柄な黒人女性と目があった。近づくと、その前にいた男性がまず名刺を出して握手。マリ共和国政府の官房長官ダウダ・タンガラ氏で、大統領の特別代表として大会に参加していたのだった。マリとは、以前はフランス領スーダンの一部をなしていた内陸国で、一九六〇年に独立をかちとった。ていねいにあいさつし、女性たちには会釈をしてその場は別れたが、この出会いには後日談があった。

 翌日のこと、昼食をとりに例のレストランにゆき、女性の二人組とすれちがったが、その一人が、今日は民族衣装こそつけていないが、たしか前日に大会会場の出口で目をあわせた女性である。相手側も私たちを見つけて、笑いながら「ジャポン、ジャポン」という。声をかけると、「私たちは、あなたがたの党のことをもっと知りたいし、あなたがたにわが国を見てもらいたい。機会をとらえてぜひ、マリをお訪ねください」とのごあいさつ。この女性は、マリの一政党(民族復興党)の女性運動責任者で、連れの女性は前の日に会った官房長官の夫人だった。(つづく)


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