2004年2月25日(水)「しんぶん赤旗」
今回のイラク派兵を自衛隊関係者はどうみているのか。
「自衛隊OBではあるが、政府に全部賛成しているわけではない」。陸上自衛隊で師団長を務めたことのある元幹部は、イラク戦争に話が及ぶと、苦々しい表情をみせ、こうのべました。
「(フセイン政権を)武力でたたきつぶすのがよかったのかというと、正直いって釈然としないものがある」「日本は国として必要だと判断したから、コアリッション(連合)に加わるわけだが、米国のやったことのしりぬぐいを自衛隊がさせられているという指摘は、わかるところもある」
陸自元幹部ですら疑問を示すイラク派兵。しかし政府は、こうした声に耳を傾けることもなく、「日米同盟の強化」を理由に突き進みます。
「条約の紙切れ一枚で、日本の安全が保障されるものではない」(一月八日の外国特派員協会での講演)
「ともにつらいときに一緒に行動する。そうであってこそ、(日米の)信頼は高まる」(同十六日の陸自先遣隊への訓示)
石破茂防衛庁長官は、こう繰り返します。
「圧倒的な国力を背景として、国際関係は、米国を中心とした新たな秩序が形成されつつある」
自民党の額賀福志郎政調会長は昨年十一月、ホールを埋めた政府や日米軍需企業の関係者を前にこう力説しました。東京・永田町にある憲政記念館で開かれた会合(日米安全保障戦略会議)でのことです。
こうした「米国中心」の世界秩序観は、イラク戦争の見方にも表れています。
イラク戦争は、世界的な反戦世論をはじめ、国際社会や国連安全保障理事会における多数の国々の反対を無視し、強行された侵略戦争でした。
米軍が見せつけた圧倒的な軍事力は、イラク兵だけでなく、一万人以上もの罪のない民間人の命を奪いました。ところが昨年八月の「防衛白書」は、国連憲章を踏みにじるこの侵略戦争を「(国連)安保理が有効な手段をとれない場合には、…断固たる手段をとるという米国の強い意志と能力を示した」と正当化しました。
「米国中心」の世界秩序観は、日本をどこへ導くのか。
防衛庁・自衛隊OB、研究者、マスコミ幹部でつくる「防衛戦略研究会議」が昨年九月、報告書をまとめました。事務局は、防衛庁の防衛研究所です。
報告書は、国際構造を「米国の一極体制」とし、そのイメージを「最強国米国を中心とする同心円構造」と描きます。
米国は、国連が思うようにならないなかで、対テロ報復戦争やイラクへの戦争と占領支配を、同調する国々だけでつくる「有志連合」で推進しています。まさに、国連秩序破壊の路線です。
ところが報告書は、自衛隊のイラク派兵を「有志連合としての活動であると言っても過言ではない」と評価。「(米国と)価値もリスクも共有し得る国が、…より中心に近い場を占めて特別の責任を負う地位に立つ」と説きます。
「米国の一極体制」のもと、中心の地位を占めたければ「有志連合」に乗り遅れるわけにはいかない―。イラク派兵には、こうした思惑が込められています。(つづく)