2002年4月6日(土)「しんぶん赤旗」
――法案要綱では具体的改正点はどのようなものですか。
岩佐 改正点は、大きく六点あります。
第一に、輸入食品の検査の見直しおよび国内検査体制の強化です。
輸入食品は、一九九〇年の六十八万件から九九年の百四十万件へと二倍に増え、輸入量も五百万トンも増えています(23%増)。一方、九九年の行政による輸入検査率は、わずか3・5%にすぎません。
もちろん、日本の食料自給率を高めることが最優先の課題です。でも、現に急増している輸入食品の検査体制をきちんとしていくことも急務です。
法案要綱では、九五年の食品衛生法「改正」にともなって、輸入食品の行政検査を水際検査(輸入された港や空港ですぐに検査する)から、モニタリング検査(サンプルをとって横浜、神戸などの検査場に送って検査するため、消費者が食べてしまってから検査結果がでる)にしてしまった部分をもとに戻すことを提案しています。また水際検査率を、当面二〜三割程度に引き上げ、国内市場に出まわっている食品の安全チェックなどの人員を大幅に増やすなど、検査体制を抜本的に拡充、整備する対策をとるよう提案しています。
二つ目は、食品添加物、農薬、動物用医薬品などの食品への使用、残留基準などの規制の強化についてです。
国は、九五年の「改正」で、安全をたしかめないで四百八十九品目もの天然添加物を一挙に認めました。また、国内基準が決められていない残留農薬、動物用医薬品などは、外国のゆるい基準に合わせた規制緩和をしました。国内基準のないものについては、基準がないからという理由で、事実上輸入野放しの状態です。
法案要綱では、食品添加物、農薬、動物用医薬品などの、日本の食生活にそくした厳しい国内基準をつくると同時に、基準にないものの輸入、流通を禁止することとしました。
三つ目は、雪印乳業による食中毒事件で重大な欠陥が発覚した総合衛生管理製造過程制度、いわゆるハサップ(HACCP)制度についてです。
ハサップ制度の認定工場になると、行政による安全チェックを受けなくてよいということになっています。これを改め、ハサップ認定施設であっても、定期的に検査を受けることを義務づけるとしました。
四つ目は、表示を消費者の知る権利として必要であることをはっきりさせたうえで義務づけることにしました。
現在の食品衛生法では、「安全」である食品、容器についてまで、表示を義務づけることはできないとして、当初、食品添加物、遺伝子組み換え食品、子どもの玩具などへの表示の義務づけを拒否してきました。いま、食物アレルギー、アトピー、環境ホルモンなどが大きな問題になっています。消費者の知る権利、健康に生きるための選択の権利としての表示の制度化をもりこみました。
五つ目は、予防原則をもりこんだことです。
環境や人の健康に及ぼす影響が懸念される場合には、因果関係が科学的に解明されていなくても、食中毒や健康被害などの予防的観点から、販売を規制できる仕組みとしました。この条項は画期的です。
同時に、乳幼児、妊婦、病弱者に対して、基準、規格づくりの際に、特別な配慮をすることにしました。
六つ目は、食品行政の情報公開、消費者参加をはっきり法律にもりこんだことです。(つづく)
◇岩佐恵美参院議員に聞く〈上〉、 消費者の権利明確に
◇岩佐恵美参院議員に聞く〈中〉、 検査体制強化など改正
◇岩佐恵美参院議員に聞く〈下〉、 情報公開も明確に