2018年2月13日(火)
主張
3・1ビキニデー
原水爆禁止運動の原点に立ち
今年3月、ビキニ水爆被災から64年を迎えます。1954年3月1日、南太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁で行われたアメリカの水爆実験は、1400隻以上の漁船と周辺の島民に大きな被害をもたらしました。
核兵器禁止条約を力に
被災したマグロ漁船・第五福竜丸の無線長だった久保山愛吉さんは「原水爆による犠牲者は、私で最後にしてほしい」と言い残して、被ばくから半年後に亡くなりました。太平洋産の魚や雨に含まれる放射能の影響も、大きな社会問題となりました。反核世論の高まりの中、日米両政府は、被害の一部だけの「見舞金」で政治決着を図り、全貌を覆い隠しました。
2014年、厚生労働省が被ばく漁船と乗組員の検査文書を公表したことを契機に、周辺海域で操業していた元乗組員らが16年、国家賠償請求訴訟を起こしました。今月にも結審する見通しです。
マーシャル諸島での核実験は67回にのぼります。昨年採択された核兵器禁止条約は、被爆者とともに核実験被害者の「容認しがたい苦難と損害に留意」し、被害者援助を明記しました。禁止条約の精神にもとづき、元乗組員や島民に対する補償が求められます。
ビキニ被災は、日本の反核運動の原点でもあります。原水爆禁止を求める署名は、有権者の過半数に迫る3200万人に達し、1955年には第1回原水爆禁止世界大会が開かれました。被爆者を先頭にした長年の運動は、禁止条約実現にみられるように、世界を動かす大きな役割を発揮しています。ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のノーベル平和賞受賞は象徴的な出来事です。
昨秋の国連総会では、核保有国と非核保有国の間で禁止条約をめぐる本格的な論戦が行われました。核兵器の非人道性を訴える声が広がる中、核兵器使用を前提にした「核抑止力」論の道理のなさが浮き彫りになりました。北朝鮮の核・ミサイル開発の問題も、「核抑止力」による対峙(たいじ)こそが安全への脅威であることを示しています。核保有国とその同盟国は、道義的政治的に追い詰められています。
逆流と抵抗を打ち破る、さらなる前進が必要です。トランプ米政権は今月、オバマ政権以来8年ぶりとなる新たな核戦略(「核態勢見直し」)を発表しました。核兵器使用の姿勢を一層あらわにし、「使いやすい」低威力の核兵器を新たに開発する危険極まる計画です。海洋発射の核巡航ミサイルの再配備も盛り込んでいます。このようなトランプ政権に追随する安倍政権が、憲法9条改憲を企てていることは重大です。安倍改憲を許さない「3000万人署名」を推進するなど、国会での改憲発議を阻むたたかいが急がれます。
新たな情勢に応える運動
2020年に世界で数億人をめざす「ヒバクシャ国際署名」が党派を超えて広がりつつあります。原水爆禁止運動の原点を想起し、新たな情勢の下で国民的な世論と運動をつくりあげるときです。
核兵器禁止条約への署名・批准を政府に迫る運動を、市民と野党の共闘の時代にふさわしく発展させることも求められています。ビキニデーの集会と諸行事(27日~3月1日、静岡市と焼津市)が、その跳躍台となることが期待されています。