2018年2月18日(日)
主張
黒田日銀総裁再任
破綻した金融政策の責任問え
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の柱として、異常な金融政策を担ってきた黒田東彦(はるひこ)日本銀行総裁の再任案が国会に提示されました。安倍政権の復活直後、日本経済が「デフレ」を脱却できないのは日銀の責任だと主張して、前任の白川方明(まさあき)氏が任期途中で辞任したのを受け総裁に就任、再任されれば1960年前後に2期務めた山際正道氏以来です。黒田氏は2年で2%の物価上昇を実現すると、金融緩和の拡大やマイナス金利など「異次元」の政策を続けてきましたが、目標達成どころか、ひずみが拡大しています。黒田総裁の責任が問われます。
安倍政権と一体で推進
2012年末に政権復帰した安倍政権のもとで、黒田氏は13年3月に総裁に就任(同年4月再任、任期5年)、政権と一体で異常な金融政策を拡大一辺倒で進めてきました。「異次元」の金融緩和と大胆な財政支出、「規制緩和」など成長政策が安倍政権の持ち出した「アベノミクス」の3本柱です。
金融を緩和すれば、資金の供給が増え、物価が上昇し、「デフレ」から脱却できると主張する黒田総裁は、この5年近く、日銀が市中に出回る国債などの金融資産を買い上げるとともに、銀行に支払う金利の一部を「ゼロ」から「マイナス」に引き下げて、資金の供給を増やしてきました。日銀が進めた国債や投資信託などの買い集めは、株価を引き上げて大企業を潤したうえ、財政法の日銀の国債引き受けの禁止さえ事実上空文化するものです。「アベノミクス」の財政政策とともに国債の発行が歯止めを失い、財政悪化を激化させています。黒田総裁になって初めて実行された「マイナス」金利は、銀行が日銀に預ける当座預金に金利を付けるどころか逆に手数料を取るもので、その導入は金融市場を混乱させ、とりわけ中小の金融機関や預金者を苦しめています。
物価上昇を最優先する黒田総裁は、安倍政権が14年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた際にも積極的に支持、引き上げの延期に反対しました。
日銀がこうした異常な金融政策によって資金供給を増やした結果、資金が余って投機が進み、円安や株価の上昇は続きましたが、輸出などでもうける大企業や株式などに投資する大資産家の利益を増やしただけで、多くの国民は潤いません。物価も思ったように上昇せず、黒田総裁が掲げた消費者物価の2%上昇目標は再三延期され、現在は6回目の延期で、現在の任期中には実現できない見通しです。だいたい金融政策だけで物価を上昇させようとするのが間違いで、賃金を上げ、国民の消費を増やし、経済を活発にしてこそ、日本経済の再生は可能です。金融政策に異常に頼る間違った経済政策は、国民を苦しめるだけです。
日銀に「出口」戦略がない
金融緩和はアメリカや欧州などの国々でも行われてきましたが、バブルの再燃など弊害が多いというので、相次いで見直しに動いています。黒田総裁の下、間違った金融政策に固執する日銀は、株価の下落や国債の金利が上がった場合の対策など、「出口」戦略の検討さえ拒否しています。日銀の経営悪化が、国民にしわ寄せされるのは絶対に許されません。
黒田総裁が推進してきた金融政策の見直しこそが不可欠です。