2018年2月20日(火)
“ねつ造”データで「働き方改革」
一般労働者→最長の残業時間
裁量労働者→1日の労働時間
安倍晋三首相が裁量労働制の労働時間に関する国会答弁を撤回した問題で、厚生労働省が19日、答弁の根拠となった同省の調査データの検証結果を公表しました。一般労働者の労働時間が長くなるように「最長の残業時間」を使うなど“ねつ造”されていたことが判明。長時間労働にならないとする裁量労働制の対象拡大の根拠が崩れただけにとどまらず、労働時間データの“ねつ造”に対する安倍内閣の責任が問われる重大事態になっています。(深山直人)
|
問題となったのは、厚労省の「2013年度労働時間等総合実態調査」。
首相はこのデータをもとに一般労働者の労働時間は9時間37分、裁量労働制(企画業務型)の労働時間は9時間16分になっているとして、1月29日の衆院予算委で「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」と答弁しました。
その後、根拠データに対して野党側から次つぎと疑義が出され、14日に答弁を撤回、謝罪する事態に追い込まれました。
まったく違う調査方法
厚労省の検証結果によると、一般労働者の労働時間は1カ月のうち「1日で最も長い残業時間」について調査。これに対し、裁量労働制については、最も多くの労働者が属する1日の「労働時間の状況」などを調査しました。
一般労働者と裁量労働者についてまったく異なる調査方法だったことがはっきりしました。
安倍首相は、一般労働者も裁量労働者もともに、労働時間が「平均的な者」と考えられる人を選んで調査したと答弁してきました。しかし、一般労働者のほうが長くなるような調査を行っていたことが鮮明になりました。
検証結果では、一般労働者については1日の残業時間しか調査していないにもかかわらず、残業時間の平均に法定時間の8時間を加えて「平均労働時間」を算出していたことを認めました。
労働時間データについて実態をゆがめる調査をした上に、データを集計する時点でも加工を加えて実態を反映しないデータを作り出す“二重のねつ造”を行っていたのです。
検証結果では、なぜこうした“ねつ造”をしたのか、その目的も経緯も責任もまったく明らかにされていません。国会でも加藤勝信厚労相は「不適切」だと認めましたが、動機や責任についてはいっさい明らかにしませんでした。
日本共産党の小池晃書記局長は19日の記者会見で「裁量労働制の営業職への拡大を何が何でも押し通したい意図があったとしか思えない。まさにねつ造だ」と批判しました。
|
3年にわたりあざむく
厚労省は2015年以降、今回明らかになったデータを使って、裁量労働制で働く人が一般労働者より労働時間が短くなっていると繰り返し引用し、答弁してきました。3年間にもわたって国会と国民をあざむいてきた事実はきわめて重く、安倍政権の責任が厳しく問われます。
安倍首相は、「このデータのみを基盤として法案を作成していない」(14日)として法案を提出する姿勢を変えていません。しかし、論拠も崩れた上、データをねつ造した責任が浮上し、法案提出の資格そのものが問われています。野党からは、裁量労働制の拡大を盛り込んだ「働き方改革」法案の提出は断じて認められないとの声が強まっています。