2018年2月25日(日)
裁量労働制 追い込まれる政府与党
過労死遺族らと野党6党が連帯
「国民が政府に対して信頼のおけるような検証や説明など、誠実な対応が求められる」―。自民党の二階俊博幹事長は23日の与野党書記局長・幹事長会談で、裁量労働制についての再調査など3点を求める6野党にこう答えざるを得ませんでした。ねつ造データへの国民の批判と野党の追及が、政府・与党を追い詰めつつあります。
大きく潮目を変えたのは、21日の衆院予算委員会の中央公聴会でした。「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子さんは22年前、かけがえのない夫を飛び降り自殺で失いました。年4000時間を超える労働。しかし会社は目標に達していないと叱責しました。「夫は会社の利益のために、睡眠時間と家族と過ごす時間を犠牲にして尽くしました。その見返りが過労自死でした」。しんと静まる委員会室。与党議員も「鬼気迫る話」「ちゃんとした議論をしなければ」(公明・浜村進議員)とえりをただすほどでした。
6野党は、家族の会と連帯。23日には国会内で合同集会を開き、政府・与党の裁量労働拡大を断念へ追い込む決意を確認しました。抗議行動が各地で起きるなど、世論も高揚しています。
国会質問では「命を奪う法律はつくるな」が合言葉のようになり、政府答弁は苦しさを増しています。
逢坂誠二衆院議員(立憲民主)が現行の裁量労働制の規制強化が先だとただすと、加藤勝信厚労相は「(裁量制の)対象になり得る人に機会を提供していく」と繰り返すばかりでした(23日)。なぜ先に規制強化ができないのかの合理的な説明がありません。
また加藤厚労相は、裁量労働制の方が労働時間が長いとする労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査結果が労働政策審議会に報告されなかった理由を問われると「私も分かりません」(22日、立民・岡本あき子衆院議員への答弁)と説明を放棄しました。
日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は、現状でも野村不動産が裁量労働制を社員に違法に適用して東京労働局から是正勧告を受けるなど問題が起きているとして、裁量労働の拡大の狙いは「サービス残業の合法化だ」と批判しました。加藤厚労相は「そうならないよう監督する」と繰り返しましたが、全国に約3000人しかいない労働基準監督官を増やすわけでもなく、説得力がありません。
冒頭の与野党書記局長・幹事長会談の席で自民党の二階氏は、週明けの回答を約束しました。日本共産党の小池晃書記局長は言います。「与党は回答できず、週明けまで延ばした。この間、『全国過労死を考える家族の会』のみなさんはじめ、野党6党が結束して要求したことが、与党・政府を追い込んでいる。引き続き、野党が心を一つにして安倍暴走政治とたたかうために頑張り抜こう」