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日本共産党

2018年4月24日(火)

英の戦後復興に貢献

カリブ移民不当処遇

メイ首相謝罪 12カ国に書簡

 【ベルリン=伊藤寿庸】戦後復興のため、カリブ諸国から英国に渡った移民やその子どもたちが、近年の移民締め付け政策で「不法滞在者」扱いを受ける例が相次ぎ、大きな怒りを呼んでいます。19、20の両日、ロンドンで開かれた英連邦首脳会議では、メイ首相が謝罪に追われました。


 「ウィンドラッシュ世代」と呼ばれるアフリカ系のカリブ海移民は、偏見と差別にさらされながら、労働力不足だった英国で戦争で破壊された国土の再建に貢献しました。

解雇や入国拒否

 ところが、当時親に連れられて英国に渡ってきた世代は、長年英国で暮らし、学校に通い、税金を納めてきたにもかかわらず、証明書類がないとして、雇用を打ち切られたり、英国への再入国を拒まれたりしています。国民保健サービス(NHS)による無料の医療が受けられず、多額の支払いを求められる例もあります。

 ロンドン南部で20日開かれた抗議集会では、労働党の「影の内相」であるアボット下院議員が「すべての世代が、犯罪者扱いされ、軽蔑されている」と演説しました。

 英国では1990年代から欧州連合(EU)やその他の諸国からの移民が急増。国境管理では抑えられない移民の流入にたいし、2012年に当時内相だったメイ氏が打ち出したのが、不法移民にとって「敵対的な環境をつくる」という政策。医療機関や家主、雇用主に、移民や市民の地位を証明する正式な書類の確認を義務付けました。緊縮政策の中で、安上がりに移民制限を行う狙いもありました。

 ウィンドラッシュ世代の子どもたちには、正式な書類を持たない人が多く、この措置で突然「不法移民」扱いされ、国外退去の恐れさえ出てきました。

到着記録を廃棄

 そんな中、ガーディアン紙が、内務省が2010年の建物の移転に伴い、移民の到着記録を大量に廃棄していたことを元職員の証言で暴露し、問題がさらに大きくなりました。2014年の移民法改定で、定住資格を得るためには、1973年1月1日以前に英国に在住していたことを証明することが義務付けられていたからです。

 英連邦首脳会議に出席していたジャマイカのホルネス首相は「市民権の否定だ」と批判。英国が迅速に問題解決に当たるよう求めました。

 メイ首相は、首脳会議の閉会にあたり、「適切な補償の支払いを含め、最大限の努力をする」と述べ、戦後の移民は「英国民であり、われわれの一部であり、英国の建設を助けてくれた」と発言。カリブ海12カ国には書簡で正式に謝罪しました。

 この問題は、英国の欧州連合(EU)離脱後に英国で住み、働くEU市民にとっても人ごとではなく、大きな不安を呼び起こしています。

 欧州議会の英国EU離脱問題調整者のフェルホフスタット元ベルギー首相は、英国政府に対し「EU市民の全面的な保障を求める」と要求しました。


 ウィンドラッシュ世代 1948年に最初にジャマイカからの移民を乗せて英国に着いた輸送船「エンパイア・ウィンドラッシュ」号にちなむ名前で、1948年から70年代初頭に英国に渡ったカリブ海移民を指します。当時、アフリカ系の移民たちは雇用拒否、唾を吐かれるなどの差別に遭いました。親のパスポートで渡航したなどで、子どもたちの世代の一部は、証明書類を持たず、地位の証明が困難なため、新たな差別に直面しています。


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