2018年5月8日(火)
大阪・見本市 カジノ推進派に矛盾
IR装い 外資乗りだし
安倍内閣がカジノ実施法案を閣議決定した4月27日から2日間、大阪市内で大規模なカジノ見本市が開かれました。「官民で(カジノ誘致の)雰囲気醸成を」(橋下徹前大阪市長)と開かれた催しですが、根強いカジノ反対の世論に直面し、大きな矛盾に突き当たっているカジノ推進派の姿が浮かび上がりました。(竹腰将弘)
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収入の75%カジノ
見本市には、松井一郎府知事、吉村洋文大阪市長も参加したほか、進出をねらう海外の巨大カジノ企業6社が展示やイベントを開催。カジノ企業提供の「海外旅行が当たる大抽選会」などで人寄せを図りました。
展示会は、カジノそのものの要素を展示内容から一切消し去り、施設で提供するショーやスポーツイベント、飲食など、ただの観光地のような宣伝に終始しました。出展したカジノ企業の関係者は「カジノだけではなく総合的なエンターテインメント施設だということを知らせたかった」と説明しました。
カジノ推進派は、今回のカジノ解禁を「カジノ単体の解禁ではなくIR(統合型リゾート)の整備」と言い続けています。IRはカジノのまわりにホテルや国際展示場、劇場、レストランなどの施設を一体的に備えた巨大な観光施設です。
しかし、出展した米・ラスベガスのカジノ企業、MGM日本法人のエド・バワーズCEOは記者の質問に、同社の収益の「75%はカジノから得ている」と認めました。
カジノは賭博だからこそ、人から金を巻き上げる異常に高い収益力を持ちます。それが中核のビジネスなのに「カジノでなくIRだ」と言い換えをするのはごまかしです。
知事は八つ当たり
「メディアは、IRはカジノだ、賭博場をつくるのか、松井はとんでもないやつだとネガティヴ(否定的)しかいわない。IRはエンターテインメントの拠点であってカジノだけある施設ではない」―松井知事は見本市でのあいさつで、反対世論へのいらだちを、八つ当たり気味に発言しました。
地元住民の理解なしにカジノ施設の開設などできないことは、海外カジノ企業も十分承知しています。
前出MGMのバワーズ氏はプレゼンテーション(宣伝)で、同社が日本で行ったアンケート調査で「一般的にはIRに『賛成』『反対』『決めかねる』がそれぞれ3分の1だ。私たちの役割は決めかねている3分の1を引き寄せることだ」とのべました。
「カジノでなくIR」という宣伝で多数派を引き寄せ、反対世論を押し切るというのが、海外カジノ企業を含めた「官民」あげての推進派の戦略です。
水面下で激烈競争
海外カジノ企業のプレゼンテーションで、香港に本社を持つメルコリゾーツのジェフリー・デイビスCEOは「幸運に恵まれ日本にIRをつくることができれば、本社を日本に移す用意がある」と発言しました。
日本進出にかける海外カジノ企業の熱意はそれほど強いのです。水面下ですすむ企業間の利権をかけた激烈な競争を垣間見せるものでした。
カジノ実施法案は、当面のカジノ設置数を3カ所としました。大阪を含む誘致自治体間の競争も激しくなります。
米カジノ企業、ラスベガス・サンズのジョージ・タナシェビッチCEOは「他のどの都市をみても大阪ほど準備を進めたところはない。自信をもって進むべきだ」と、これからの足の引っ張り合いに向け、ハッパをかけました。