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2018年5月14日(月)

アマゾン税逃れ

租税条約に抜け穴

 米国企業アマゾンのネット通販事業が日本での課税を逃れられるのは租税条約に抜け穴があるからです。

 外国企業が日本国内で事業を行う場合、日本国内に支店や事業所などの恒久的施設がなければ事業利得に課税されません。保管や引き渡しのみを行う倉庫は、日米租税条約では恒久的施設とみなされません。アマゾンは、日本に設置したネット通販事業用の物流センターが単なる倉庫だと主張し、課税を逃れているとみられます。

 本紙の質問状への回答にアマゾン米国本社は以下のコメントを付け加えました。

 「アマゾンは日本でフルタイムの従業員を6千人以上雇っており、16の物流センターを稼働させている。日本に投資し続けることを約束し、今後数年間でも数百人のフルタイムの雇用を生み出す計画である」

 日本経済への貢献を強調し、批判をかわそうという意図が透けています。しかし、自社の雇用や施設が日本で重要な役割を果たしていると主張すればするほど、日本で課税されない現状の不条理は際立ちます。

 世界ではアマゾンなどの税逃れを念頭に租税条約の改正が進んでいます。恒久的施設の定義を拡張するなど、従来の抜け穴をふさぐ多国間条約が2016年に合意され、日本を含む78カ国・地域が署名しています(18年3月22日現在)。しかし肝心の米国は署名しておらず、「署名の意思があるかわからない」(財務省主税局)状況です。

 同じ小売業に従事しても、租税条約の抜け穴を使って税逃れできるのは外国企業だけです。事実上の特別待遇となっています。世界四大会計事務所の一つで税務マネジャーを務める専門家は、この状況を放置すると悪貨が良貨を駆逐する結果を招くと話します。

 「アマゾンが日本での課税を逃れれば、日本国内で納税する日本企業は競争上、不利になります。アマゾンが税逃れから得た巨額資金を投資に回してサービスを向上させ、消費者がアマゾンの利用を拡大すると、日本で納税する企業は圧迫されて市場から排除されます。日本の税収はますます少なくなります」

 不公平な競争で経済の構造がすっかり変わってしまう前に、公正な課税を実現する必要があります。(杉本恒如)

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