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2018年5月21日(月)

主張

陸幕の部内資料

“戦闘の危険”隠した責任重大

 安倍晋三政権が2015年9月に安保法制=戦争法の成立を強行したのを受け、陸上幕僚監部が陸上自衛隊の今後の方針や重要課題の認識を統一するために作成した部内資料に、海外で戦闘を伴う任務遂行の可能性が増大すると記述されていたことが分かり、従来の政府の説明との矛盾が問われています。政府はこれまで「自衛隊が戦闘に参加することはない」と繰り返してきました。これが国会や国民を欺くものだったことは明白です。南スーダンPKO(国連平和維持活動)など一連の日報隠蔽(いんぺい)も安保法制の危険な本質を隠すためだった疑いが濃厚です。

政府の説明は虚偽だった

 陸幕の部内資料は、教育訓練部が作成した「陸幕施策等説明」(15年9月28日付)と題するものです。日本共産党の穀田恵二議員が明らかにしました(11日、衆院外務委員会)。

 同資料は、集団的自衛権の行使を認めた閣議決定(14年7月)について「米軍、他国軍との共同作戦、武力行使を伴う任務遂行の可能性増大」としています。さらに、同閣議決定を受けて制定された安保法制に関し「国際任務における権限拡大等による国連、他国と連携した戦闘を伴う任務遂行、現場指揮官による説明責任遂行の可能性増大」と明記しています。

 安保法制は、PKOや国連が統括しない海外での活動で、形式上は停戦合意がなされているものの、実際には戦闘が続いている地域に自衛隊を派兵し、治安活動や「駆け付け警護」などの任務を行うことを初めて可能にしました(改定PKO法)。それまで自衛隊員自身を守るために限られていた武器使用も、任務遂行のために認められるようになりました。

 政府は改定PKO法について、停戦合意をはじめ「参加5原則」が満たされていることが前提であり、「(自衛隊が)戦闘に参加することはできない仕組みになっている」(安倍首相)などとごまかしてきました。南スーダンPKOに派遣される自衛隊員の家族に対する防衛省の説明資料(16年8月)も、攻撃された他国軍兵士らを救助する「駆け付け警護」で「(自衛隊が)紛争当事者となることはない」し、「武力紛争に巻き込まれることもない」と強調していました。

 ところが、実態はどうだったか。昨年、陸自による組織的な隠蔽が発覚した南スーダン派兵部隊の日報などには、16年7月の首都ジュバでの政府軍と反政府軍による大規模な武力紛争について、陸自宿営地周辺でも「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘」があり、「戦闘への巻き込まれに注意が必要」と明記されていました。

 16年11月に陸自派兵部隊に任務が付与された「駆け付け警護」を実際に行っていれば、陸幕の資料が指摘したように、「戦闘を伴う」危険がさらに高まっていたことは明らかです。虚偽の説明をしてきた政府の責任は重大です。

日報隠蔽の徹底究明必要

 南スーダンだけでなく、今、隠蔽が大問題になっているイラク派兵部隊の日報などがもっと早く公表され、戦闘が行われている現地の危険な実態が明らかにされていれば、安保法制の審議や同法制による新任務付与に重大な影響を与えたことは間違いありません。それを恐れて日報が隠蔽されたのではないか。徹底究明が必要です。


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