2018年5月24日(木)
廃棄・改ざん・隠ぺい 追い込まれ文書提出
安倍政権 居直り・強行なお狙う
緊迫国会 攻防激化
安倍内閣は23日、森友疑惑で昨年2月以降廃棄してきたとされる学校法人「森友学園」との交渉記録と改ざん前の決裁文書、自衛隊のイラク派兵部隊の「日報」隠ぺい問題についての調査結果を国会に提出しました。財務省が提出した改ざん前の決裁文書は約3000ページ、交渉記録は950ページに上ります。交渉記録からは安倍首相の妻・昭恵氏の関与が浮きぼりになりました。野党側は衆院予算委の理事らが共同記者会見を開き、安倍首相と麻生太郎財務相の責任を厳しく批判し、「徹底的に追及していく」(日本共産党の藤野保史議員)と表明しました。他方、政府・与党は衆院内閣委で、野党の反対を押し切って、11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)関連法案の採決を強行しました。衆院厚労委でも「働き方改革」一括法案の採決を狙いましたが、野党は「森友・加計」疑惑をめぐる安倍首相の責任と過労死を増やす法案の問題点を厳しく追及。高鳥修一委員長の解任決議案を提出し、この日の採決を阻止しました。
森友記録
優遇受けられないか
照会受け 昭恵氏付職員問い合わせ
隠ぺい950ページ
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新たに開示された森友学園との国有地取引に関する交渉記録には、約10回、昭恵氏に関わる記述がありました。安倍首相は自身や妻が取引に関係していたら辞職すると答弁しており、記録の開示であらためて首相の進退が問われています。
2015年11月10日の財務省本省「応答メモ」には、昭恵氏付の政府職員・谷査恵子氏からの問い合わせとして、「安倍総理夫人の知り合いの方」から「優遇を受けられないかと総理夫人に照会があり、当方からお問い合わせさせていただいた」と書かれていました。
同12日には財務省本省の田村嘉啓国有財産審理室長が谷氏の問い合わせに電話で回答。学園理事長だった籠池泰典被告=詐欺罪で起訴=は証人喚問(17年3月23日)で、昭恵氏に口利きを依頼した結果、谷氏が問い合わせしたと証言しており、これを裏付ける記録です。
交渉記録と共に開示された「本省相談メモ」(14年5月8~23日の4件)には、近畿財務局から財務省本省への説明として、籠池被告が昭恵氏から「いい土地ですから、前に進めて」と言われた、と記載(5月8日付)。財務局は籠池被告の発言後も交渉打ち切りを検討していましたが、同23日付のメモでは本省と相談の結果「延長もやむを得ない」「改めて対応を検討」と態度が急変しています。
他方で、籠池被告が「いい土地」発言を持ち出した14年4月28日当日の記録は開示されませんでした。財務省は、交渉記録について「見つかっていないものも一部にはある」と説明しており、隠している文書がまだあることがうかがえます。
交渉記録には、昨年2月の疑惑発覚以降、小池晃書記局長ら日本共産党議員が繰り返し取り上げてきた、自民党議員事務所の内部文書や交渉の録音データを裏付けるものも多数ありました。
イラク日報
組織的隠ぺいを否定
防衛省 現場に責任を押し付け
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防衛省は、存在を確認していた自衛隊イラク派兵の日報を「ない」としていた問題に関する調査報告書で、事務処理が不適切だったとして17人を処分する一方、組織的な隠ぺいは否定しました。
イラク日報をめぐっては、昨年2月20日の衆院予算委員会で日本共産党の畠山和也衆院議員(当時)らに対し、当時の稲田朋美防衛相が「残っていないことを確認している」と断言。同月22日に稲田氏が探索を指示し、同3月27日に陸自研究本部(現・教育訓練研究本部)が日報を発見しましたが報告せず、情報公開請求の照会にも「存在しない」と回答。今年1月に陸上幕僚監部、3月に小野寺五典防衛相に報告されるまで約1年にわたり日報を隠していました。
国会で野党が、戦闘など違憲の海外派兵の実態を隠すための組織的な隠ぺいだと追及していました。
報告書は、イラク日報の存在を知っていた者が、稲田氏の指示を「再探索指示」だと認識せず、報告する必要がないと考えていたとしました。小野寺氏は公表後の会見で「組織的な隠ぺいという事案にはつながらない結論になった」と述べ、現場に責任を押し付けました。
ただ、野党が求めていた稲田氏らの証人喚問も行われず、調査も元東京高検検事長の弁護士を加えただけの内部によるものだけに、野党から厳しい批判が出ることは必至です。