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2018年5月26日(土)

「働き方」法案 やり方も中身もデタラメ

強行に怒り 廃案しかない

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(写真)野党議員が採決に抗議する中、「働き方改革」一括法案の採決が強行される衆院厚労委員会=25日

 政府・与党は25日の衆院厚生労働委員会で、「働き方改革」一括法案を強行採決しました。データのねつ造などで法案提出の根拠が総崩れし、過労死促進の危険な中身も浮き彫りになる中での暴挙。国政私物化で政権の資格そのものが問われているにもかかわらず、疑惑にフタをしたまま、法案採決を強行する安倍政権の暴走は許されません。

「データねつ造」底なし

 「働き方改革」一括法案は、ねつ造、隠ぺいの疑惑にまみれたままです。

 「審議の出発点」となった労働時間データは、1日の労働時間が24時間を超えるなどの異常値を2割も削除しました。法案を強行採決した25日も、同一の調査票を二重に集計していたことが発覚。データねつ造疑惑は底なしです。

 ねつ造疑惑の原因究明も、高プロ対象者を検討するデータとなる裁量労働制の再調査もこれからです。

 加藤勝信厚労相は、2割削除したデータでも「法案の結論に変わりない」と強弁します。しかし、再集計で、一般労働者の残業時間を年1000時間超で協定している事業所で実際に限界まで働かせている事業所は、3・9%から48・5%に激増しました。法案を撤回し、労働政策審議会に差し戻すしかありません。

 過労死が増える懸念に対して安倍政権が「しっかり指導」の好事例とアピールしていた、野村不動産の「特別指導」は、過労自殺の事実を伏せたままのものだったことが判明。4年前の監督時に裁量労働制の違法適用を見抜けず、過労自殺に至ったことも明らかになりました。“過労自殺隠し”をしていた安倍政権に法案提出の資格はありません。

長時間労働 歯止めなし

 働き方法案は、わずかな審議のあいだにも欠陥が噴出しています。

 安倍首相は、高プロを「自律的に働ける」とアピールしました。しかし、高プロは、長時間労働に歯止めがなく、労働者に裁量を与える規定もないため、業務命令を拒否できません。最低限義務付けられた休日をまとめて取らせれば、あとは1日24時間労働を48日連続させることも可能です。

 加藤厚労相は、残業相当が月100時間で医師面談を行うと繰り返しましたが、面談で残業がストップするわけではありません。月200時間でも合法だと認めました。

 安倍首相は「時間ではなく成果で評価されたい人もいる」と言いわけしました。しかし、法案には、成果をあげても報酬が増えるとは書いていません。業務量はあらかじめ決められており、残業を減らせない仕組みです。

 残業時間の「上限規制」は単月100時間、平均80時間という「過労死ライン」にお墨付きを与えるものです。月をまたいで30日間150時間以上の残業も可能であり、抜け穴があると加藤厚労相も認めました。

 研究開発は適用除外。建設、自動車運転、医師は5年先送りのうえ、自動車運転は5年後も緩い基準になります。中小企業では違法に対する罰則を骨抜きにされます。

 同一労働同一賃金は、法案に言葉もなく、中身も従来と変わりません。パートで正社員と同等になるのはわずか1・5%。有期雇用は、無期転換した労働者と比較するので、正社員との格差は放置。派遣労働者も正社員と同等に扱われる人は限られると厚労省が答えています。実効性ある改正には徹底審議、見直しが不可欠です。

「モリカケ」疑惑にフタ

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 そもそも安倍内閣と与党に「働き方改革」一括法案を提出し、採決する資格などありません。

 安倍首相は23日の衆院厚生労働委員会で、森友学園への国有地売却について問われ、「私や妻がこの国有地払い下げや学校の認可に一切かかわっていないことは明確にさせていただきたい」と強調しました。しかし、この日に財務省が公表した森友学園との国有地取引をめぐる決裁文書や交渉記録には、安倍首相の妻・昭恵氏の動かしがたい関与が記されており、国会と国民を欺き続けてきた安倍首相の責任が厳しく問われています。

 さらに、加計学園の獣医学部新設をめぐっても、愛媛県が参院に提出した面談記録によって、加計学園の加計孝太郎理事長と安倍首相が2015年2月25日に面談したことが出発点となった可能性がいよいよ濃厚になっており、安倍首相の進退が問われる問題になっています。安倍首相に求められるのは、真相究明に応じ、国民に謝罪して総辞職することです。

 ところが、安倍首相は、疑惑にフタをしたまま、採決ありきで強引な国会運営を強行。衆院厚生労働委員会での審議は、自民党の高鳥修一委員長が職権を乱用して、委員会を開催しつづけました。野党が不在でも質疑時間を消化させる「空回し」時間は実に17時間23分。委員長職権による開催は、開催委員会の半分の11回にも及び、もはや国会審議の体をなしていません。

 政権を担う資格のない安倍政権が世論と運動に追い詰められ、数の力で採決を強行しても、圧倒的多数の国民の声を押しつぶすことはできません。政府・与党をさらに追い詰め、民意の力で廃案にさせるしかありません。


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