2018年5月28日(月)
主張
第5次エネ計画案
原発推進の硬直姿勢を改めよ
経済産業省が先にまとめた国の「第5次エネルギー基本計画」案に批判と懸念の声が相次いでいます。計画案が原発推進にあくまで固執する姿勢を鮮明にするとともに、世界で急速に進む再生可能エネルギー拡大の流れから日本が取り残される重大な内容になっているためです。安倍晋三政権は計画案への国民の意見公募(パブリックコメント)を6月中旬まで行い、夏までに閣議決定する予定ですが、この計画案を認めることはできません。
約13万人分の署名提出
原発ゼロ・自然エネルギー社会などを求める幅広い市民団体が23日、衆院議員会館で合同集会を開き、基本計画案の根本的な見直しを求める署名約13万人分を政府に提出しました。国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す計画を、国民の声を無視してつくるなという強い意思表示です。
エネルギー基本計画はほぼ3年に1度改定され、第4次計画は2014年に決定されました。今回は、安倍氏の政権復帰後2回目の改定ですが、今月16日に経産省が示した計画案は、原発にますますしがみつく硬直した姿勢を一層浮き彫りにしています。前計画を踏襲し、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけたうえ、2030年度の全電源に占める原発の比率を20~22%としたことは極めて重大です。しかも、この電源比率の「確実な実現に全力を挙げる」とまで強調しています。
現在約2%の原発の比率を20%以上に引き上げるためには、運転開始から40年未満の原発をすべて再稼働させることに加え、40年超の老朽原発も動かさなければなりません。福島県で超党派で「全基廃炉」の要求がつきつけられている東京電力の福島第2原発、どの世論調査でも再稼働反対の声が圧倒的多数を占める東電柏崎刈羽原発(新潟県)を動かすことが、大前提となります。
7年たっても収束せず、住民に苦難を強いている福島第1原発事故への反省がありません。国民の願いに逆らう計画案は根本から改めるべきです。
計画案が、30年の再生可能エネルギーの比率を22~24%と従来水準に据え置いたことに厳しい批判が集中しています。世界では先進国も途上国も、太陽光、風力など再生可能エネルギーの拡大を急ピッチですすめ、少なくない国や地域が2030年に40~50%の再生エネ導入を目標にしています。計画案はあまりに後ろ向きです。
石炭火力発電でも、二酸化炭素排出量が天然ガスに比べて2倍以上になる「高効率石炭火力」の推進を掲げていることは異常です。これでは、21世紀後半に温室ガス排出をゼロにすることをめざす世界的枠組みである「パリ協定」と相いれません。
国民不在は許されない
計画案作成を議論した経産省の審議会のメンバーの大多数が原発推進・維持派だったことは大問題です。案づくりの過程で寄せられた300件余の意見で多数を占めたのは「世界の流れに逆行している」などの声でした。しかしこの声は計画案に反映されていません。
国民不在のエネルギー計画の決定を許さず、原発ゼロの実現、再生エネを飛躍的に拡大する政策実現を迫っていくことがいよいよ求められます。