2018年6月2日(土)
過労死ラインの残業時間容認
抜け穴だらけの「上限規制」
「働き方改革」一括法案では、残業時間に「上限規制」を設けるとしています。しかし、「過労死ライン」の残業を容認し、「抜け穴」だらけで、長時間労働を是正できる内容とはいえません。
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月100時間残業も
厚生労働省の「脳・心臓疾患の労災認定」の判断基準(過労死ライン)では、残業が月45時間を超えて長くなるほど関連性が強まり、1カ月100時間または平均80時間を超えると発症との関連性は強くなります。
法案では、これと同じく単月100時間、平均80時間まで残業を認めており、「過労死ライン」にお墨付きを与える内容です。
日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は、月をまたぐと30日間で150時間以上の残業をさせても合法になる抜け穴があると追及。加藤勝信厚労相は「ありえる」と認めました。(5月11日)
規制適用除外に
研究開発業務は、上限規制が適用除外となり、青天井で長時間残業をさせられます。
自動車運転、建設、医師は上限規制を5年先送り。自動車運転は5年後も年960時間とされ、一般労働者の年720時間より長時間労働が継続します。
雇用の7割を占める中小企業は適用を1年延期し、罰則付き規制について配慮する規定が法案修正で設けられました。上限規制の抜け穴となるものです。中小企業は、延期の間に大企業から業務を押し付けられ、是正されない恐れもあります。
抜け穴とされた分野は、就活生や求職者から敬遠されて、人手不足で長時間労働に拍車がかかる悪循環を招く危険性があります。
全労連は、抜け穴だらけの上限規制について「安倍首相が明言した『過労死の悲劇を二度と繰り返さない』という公約に反するものであり、健康被害を発生させない水準まで、引き下げるべきである」と求めています。
連合が4月に行った院内集会では、運輸労連が「ドライバーの命を守るため、上限規制について一般則の適用を強く求める」、中小製造業のJAMが「弱い立場にある中小企業労働者のことを考える視点が欠落している」と批判しました。
月45時間まで 共産党が改正大綱
日本共産党は5月11日、労働基準法改正大綱を発表。上限基準は、週15時間、月45時間、年360時間という労働省告示に法的拘束力をもたせ、連続11時間の勤務間インターバルを明記することを提案しています。