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2018年6月4日(月)

「命と生活を破壊」 「働き方」法案 批判相次ぐ

過労死防止学会大会終わる

 札幌市で開かれていた過労死防止学会の大会は3日、「過労死問題からみた“働き方改革”の諸問題」を共通論題に、「働き方」一括法案の問題点や危険性について議論し、閉会しました。


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(写真)「働き方改革」一括法案の問題について議論する報告者ら=3日、札幌市

「自由・柔軟」は政府の印象操作

 報告した法政大学の上西充子教授は、労働基準法は、「人たるに値する生活」を保障するための最低基準だと指摘。法案の残業時間の上限規制で、過労死ラインの単月100時間未満などが容認されているとして、「企業の安全配慮義務が100時間までいいことになる」と批判しました。

 高度プロフェッショナル制度(高プロ)について、「残業という概念も、8時間労働制という枠もなくなる」と指摘。政府がいう「自由で柔軟な働き方」は印象操作であり、労働者が「柔軟に働けるのではなく、(使用者が)柔軟に働かせるものだ」と語りました。そのうえで高プロは「労働法制のしばりをはずして、穴をあけるものだ」とのべました。

 法案にある「多様な就業形態の普及」にかかわって、「フリーランスなど労働法制に守られない働き方だ」として、拡大の危険性を指摘しました。

 労働政策研究・研修機構(JILPT)労働政策研究所長の濱口桂一郎氏は、EUの労働時間指令では、1週間について「時間外労働を含め、48時間を超えないものだ。週48時間とは、そこで時間外労働が終わる時間だ」と指摘。「1日ごとの休息期間を得る権利を確保する」とした、終業から始業までの連続11時間の休息を保障するインターバル規制について「絶対的な休息期間規制」と紹介しました。労働時間規制は、こうした実労働時間規制であるべきだとして、「命と健康を守る、安全衛生規制だからだ」とのべました。

 安倍晋三首相が日本の労働法制を「岩盤規制」と呼んでいることについて、「日本の労働時間規制は岩盤どころか豆腐だ。だから、電通で新入社員が過労自殺する。日本は米国と並んで労働時間規制は緩い」と語りました。

過労死なくす時間規制必要

 関西大学名誉教授の森岡孝二氏は、1980年代と今日とを比較して、変わらない点として、長時間労働で、企業中心の時間構造のもとで過労死が起きていると指摘。変化した点として、壮年期の過労死の多発から、若年層の過労自殺の多発に移行するとともに、大多数が正社員の時代から、非正規雇用となり、貧困と過労死が併存するようになっていると語りました。

 また、残業させることができる「三六(さぶろく)協定」は、労働時間規制を解除するものであり、「三六協定で、1日24時間の労働を認める例がいまでもある」と告発しました。

 そのうえで労働時間を短縮させる必要性について、「人たるに値する生活に必要だからだ」と強調。残業の上限規制について「過労死多発ゾーンの時間帯を上限としており、なくなりようがない」と指摘しました。「過労死をなくすためにも、自由時間の確保、社会参加、家族生活の時間を確保する労働時間規制が必要だ」として、「これらを現実に実効性あるものに変えていく改革が問われている」とのべました。

 共通論題の議論に先立ち、建設関連産業や医療現場、教員など6分科会で、就業実態や長時間労働の現状について議論しました。


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