しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年6月7日(木)

主張

「働かせ方」大改悪

時代に逆らう法案許されない

 「働き方改革」一括法案の参院審議が厚生労働委員会で始まりました。この法案は、前提となるデータでねつ造や異常値が発覚し、国会に提出すること自体に疑義が突き付けられています。歯止めない長時間労働をまん延させる「過労死促進・合法化」という危険な中身がこれまでの野党の追及で明らかになりましたが、安倍晋三政権はまともに説明できません。破綻があらわな法案を賛成多数で衆院可決した与党などの責任は重大です。法案への国民の不安と懸念は高まっており、問題は山積しています。参院で徹底審議し、廃案にするしかありません。

戦後の労働法制を否定

 一括法案は、働く者の命と健康を破壊し、権利も脅かす重大な中身が盛り込まれている文字通り「働かせ方」大改悪案です。労働時間規制を撤廃する「高度プロフェッショナル制度」(「残業代ゼロ制度」)を初めて導入しようとしていることは大問題です。同制度は、労働時間規制を全面的に適用除外にし、週休2日にあたる年104日だけ休めば、24時間労働を48日間連続させても違法にならないというとんでもない仕組みです。

 これは、労働者が長年のたたかいでかちとってきた「8時間労働制」を根底から覆すものにほかなりません。人間的な生活をするうえで労働時間の短縮は極めて重要な課題です。世界の労働者は18世紀後半の産業革命の時代から切実な問題として取り組み、19世紀半ばのイギリスの工場立法などで時間規制を実現してきました。その中で「8時間労働制」は世界共通の課題となりました。1919年結成の国際労働機関(ILO)が採択した最初の条約も1日8時間・週48時間の規制についてのものでした。「残業代ゼロ」制度が、労働者を守る歴史の進歩を逆転させる制度であることは明白です。

 これは戦後日本の労働法制の否定でもあります。敗戦直後の1947年に制定された労働基準法は第1条で「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充(み)たすべきものでなければならない」と掲げています。制定時の国会で政府は、民間の自由契約だけに任せていては労働者を守れない、国家が基準を示すべきだなどと説明していました。さらに“戦前のような時間を引き延ばして仕事をするよりも、国際的な水準の上にたって能率を上げるよう転換すべきでないか”“朝から晩まで長い時間働いて、帰って寝る時間しか与えられないのでは、しっかりした日本の再建にならない”などとも強調していました。

 これらの議論は日本国憲法27条2項の「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」の規定を受けたものです。憲法の要請に基づく当時の議論を、いまこそ想起すべきではないのか。戦後の歩みを逆行させる「働き方」法案を強行することは許されません。

国際的な到達点にたって

 ILOは労働時間に関する18本の条約を採択していますが、日本は一本も批准していません。長時間労働を真剣になくすというなら、ILOの条約を批准して、国内法を整備すべきです。

 歴史の流れにも、世界の流れにも逆らう「働き方」法案には全く道理はありません。廃案に追い込む世論と運動を広げる時です。


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