しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

2018年6月9日(土)

日米首脳会談

戦略不在の安倍政権、正念場

対話の流れに追いつけるか

 朝鮮半島情勢をめぐり、北朝鮮に対する「対話否定・圧力一辺倒」路線に固執するうちに、2月の平昌五輪以降、劇的に展開した対話の流れから取り残された安倍政権は巻き返しに必死です。

政府の右往左往

 安倍晋三首相は4月17~18日(日本時間18~19日)の訪米に続き、7日(同8日)にもワシントンでトランプ大統領との首脳会談に臨み、「完全な非核化」までの「圧力継続」に加え、日本にとって重要課題である拉致問題を12日の米朝首脳会談で取り上げるよう改めて要請しました。これ以外にも、河野太郎外相や小野寺五典防衛相が訪米攻勢を続け、米国の動きに遅れまいと懸命です。(表)

 しかし、こうした「拉致最優先・米国頼み」の姿勢については、小泉政権時に日朝交渉を担ってきた田中均・元外務審議官が「トランプ大統領と会うだけでは、非核化のために日本がどういう協力ができるのかがベースにないと外交ではない。戦略の不在だ」(5月27日、民放テレビ「時事放談」)と厳しく批判しています。

 「戦略不在」ぶりは、米国の方針転換に右往左往する様子からもうかがえます。4月の首脳会談では、日米は北朝鮮に対して「最大限の圧力」をかけることで一致しました。

 ところがトランプ大統領は7日の共同記者会見で、「『最大限の圧力』は効果を生んできたが、もう使わない。友好的な交渉を行いたいからだ」と方針転換を表明。これに関して首相は「圧力」という言葉を一度も使うことなく、「日米はともにある」との文言を繰り返すにとどまりました。他の閣僚からも、「最大限」との文言が消え去りました。

 トランプ大統領が一時、米朝会談の中止を表明した際も、関係国で明確に支持したのは日本だけ。無定見ぶりがうかがえます。

 米朝の橋渡しに尽力してきた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権からは、日朝の対話再開を求める声が相次いでいます。国会でも、野党側から「米国頼みだ」との批判が相次ぎました。

世界史的課題へ

 こうした中、首相は7日の会見で日朝首脳会談の実現に強い意欲を示しました。拉致問題は日本人の生命・人権に関する問題であり、日本政府が主導して解決に導くのは当然です。ただ、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との立場であり、「拉致問題解決に資する首脳会談」(安倍首相)に固執した場合、実現性は不透明です。

 政府関係者によれば、北京の日本大使館ルートなどで北朝鮮側と接触しているといいます。どうすれば日朝対話が実現するのか、知恵を絞る必要があります。

 政府は情報収集を目的として、米朝首脳会談が開かれるシンガポールに関係者を派遣。8月上旬のASEAN(東南アジア諸国連合)外相会合での日朝接触も模索するなどの動きも見せています。

 乗り遅れた対話の流れに追いつき、「朝鮮半島の非核化」という世界史的な課題のために何ができるのか。日本政府は正念場に立たされています。(竹下岳)

北朝鮮問題をめぐる最近の日本の動き

 (いずれも日本時間)

 4・18~19 日米首脳会談 (フロリダ州パームビーチ)

 4・21 日米防衛相会談(ワシントン)

 4・30 日米外相会談 (ヨルダン・アンマン)

 5・9 日中韓首脳会談(東京)

 5・24 日米外相会談(ワシントン)

 5・30 日米防衛相会談(ホノルル)

 6・7 日米外相会談(ワシントン)

 6・8 日米首脳会談(  〃  )

 6・13以降 日米韓外相会合(ソウル)


pageup