2018年6月15日(金)
「TPP11」承認案 井上議員の反対討論 (要旨)
参院本会議
日本共産党の井上哲士議員が13日の参院本会議で行った、米国を除く環太平洋連携協定(TPP)参加11カ国の新協定「TPP11」承認案に対する反対討論(要旨)は次の通りです。
私は2013年2月の予算委員会で、あるポスターを国会で初めて掲げて安倍晋三首相をただしました。「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない」という12年総選挙での自民党候補のポスターです。
この選挙で自民党は政権に復帰しました。以降、安倍政権は、断固反対だったはずのTPPをアベノミクスの柱に据えて交渉に参加し、発効の見込みのない協定承認案の採決、そしてTPP11協定と、強行に強行を重ねてきました。TPP問題とは、今日の安倍暴走政治、隠ぺい・改ざん政治の出発点というべきものです。
本協定で日本は、農産物関税撤廃・引き下げをかつてない水準で進めることを約束しています。これは米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5品目を除外するとした国会決議に明確に違反するものであり、農業とその関連産業に壊滅的な影響を及ぼすものです。そのうえ政府は、米国の参加が前提で約束した、牛肉のセーフガード発動基準や乳製品の輸入枠など農産品の譲許内容を米国離脱後もまったく変えていません。農業と農業者をまったく顧みない姿勢と断ぜざるを得ません。
農業と食料は国の基本です。国民の命と食を支える農業を衰退させ、食料自給の向上を放棄し、食料安全保障をないがしろにする政党・政治家に「日本を守る」と口にする資格はありません。
TPP11交渉では、参加国から凍結を要求する項目が相次ぎ、最終的に22項目が凍結されました。ところが日本政府は、凍結の主張を一切行わなかったと答弁しました。政府が一切凍結を主張せず「高い水準の協定をめざしたため」だと開き直るのは、国会審議や国民の声をないがしろする姿勢そのものです。
TPP11で凍結された項目には、ISDS(投資家対国家紛争解決)条項の一部が含まれます。グローバル企業が引き起こす健康・環境被害を各国が規制しようとしても企業が国を訴え、逆に損害賠償を命じられるなど、ISDSがもたらす主権侵害に対する懸念が参加各国にも広がったからです。ところが、政府は質疑の中で、「一部の項目が凍結されたが、海外に進出する日本企業にとって非常に有意義」と評価する一方、グローバル企業による日本の主権侵害の懸念を否定しました。日本政府は、まさに世界のISDS見直しの流れに取り残されています。
米国はTPPを離脱し、日本と2国間協定を結びたいと明言しています。これに対して、政府が「米国のTPP復帰を待つ」としながら、新たな日米通商協議FFRの7月の開始に合意したことは重大です。米国が3月に公表した「外国貿易障壁報告書」は日本に多くの要求を突き付けています。そこには、農産物の関税やセーフガード、残留農薬基準、食品添加物規制、自動車の安全基準、薬価制度等々国民の命とくらしに関わる項目が並んでいます。これらの要求がFFRでの協議対象になるのかとの質問に政府は、「対象にしないとは合意していない」と答弁しました。FFRがアメリカから一方的譲歩を迫られる場となり、その出発点がTPP11とされる懸念は強まるばかりです。米国との間で、国民の利益を損なう一層の譲歩や日米FTA(自由貿易協定)に道を開く協議はやめるべきです。