2018年6月23日(土)
三井住友海上 「働き方」改悪 先取り
残業上限 年190時間引き上げ
長時間労働 縮減どころか拡大
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損保大手の三井住友海上火災保険が4月から、年間の残業上限時間(特別条項)を350時間から540時間に引き上げました。国会で審議されている「働き方改革」一括法案で、過労死ラインを超える上限設定が打ち出されたのを受けて、その先取りを行うものとみられています。
同社では、これまで残業の年間限度時間を管理職を除く課長代理以下の全社員は、特別な事情がある場合は350時間とする「三六協定」の特別条項を結んでいました。年間の上限を360時間とする現行基準の範囲に収まっていました。
ところが同社は、4月から特別条項について、540時間に引き上げました。現行より190時間も引き上げる大幅延長です。
会社は改定理由について、現行の限度時間内での業務運営では、「お客さま対応や品質徹底に支障をきたす懸念がある」として、「時間外労働上限規制の法制化動向を踏まえつつ36協定の見直しを検討する必要がある」と説明しています。
政府の法案で、年間限度時間が360時間から720時間へ引き上げられるのを契機として、限度時間を見直すというわけです。
「生産性向上」優先
同社では「働き方改革」として、「原則午後7時退社」を打ち出していますが、「生産性を高めることが『働き方改革』の目的」と強調されており、「早出出勤」が相次いでいる実態があります。年間限度時間の見直しも「生産性向上」を最優先とする姿勢から打ち出されたものです。
日本共産党の倉林明子議員は19日の参院厚生労働委員会で、同社の上限引き上げを取り上げ、「法案の成立を見込んだ改定だ。長時間労働の縮減どころか拡大になっている」と追及しました。
厚生労働省の山越敬一労働基準局長は「可能な限り短くするよう助言、指導を行う」というだけで、法案では引き上げを防止できないことを認めました。
延長引き上げ誘発
上限引き上げは、単月100時間、平均80時間、年間720時間という過労死ラインの上限設定が法案に盛り込まれたときから危ぐされてきました。
厚労省の調査(2013年)では、特別条項付き三六協定の約8割は、上限を年360時間未満としています。1カ月でみても月45時間未満が約8割です。
過労死防止全国センターの森岡孝二代表幹事らは、「延長時間の引き上げを誘発する恐れが大きい」として、法案が成立すると「過労死をかえって多発させる」と指摘しています。
倉林氏は、「現行の週15時間、月45時間、年360時間の限度時間を法定化することが必要だ」と求めました。