2018年6月25日(月)
過労死遺族 懸命の行動
悲劇繰り返さないで
残業代ゼロ廃案必ず
「過労死の悲劇を二度と繰り返させない」―。大切な家族を過労死で亡くした遺族が、過労死を促進する「働き方改革」一括法案は廃案にと訴えています。国会前の座り込みや傍聴、街頭宣伝と懸命の活動を続ける遺族の思いは―。(田代正則)
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「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)は、残業代ゼロ法案です。死ぬまで働いても自己責任になる」。全国過労死家族の会代表の寺西笑子さん(69)は国会の会期が延長された20日、雨の東京・秋葉原で訴えました。家族の会は都内の新橋、新宿、秋葉原とサラリーマンや若者が集まる夜の駅前で、日本労働弁護団や野党議員らと一緒に連続宣伝をしています。
寺西さんの夫は22年前、飲食店の店長で年間4000時間を超える長時間労働で過労自殺。「勝手に働いて勝手に死んだ」と主張する会社に対し裁判に訴え、謝罪させました。「高プロは労働時間管理もしなくなり、かつて会社が私に言った主張を可能にする制度です。大切な家族を亡くす悲劇をなくしたい」
元NHK記者、佐戸未和さんの母、恵美子さん(68)は、「この時期は1年でいちばんつらい」と言います。6月26日が未和さんの誕生日、7月24日が命日だからです。未和さんが36歳になるはずだった26日には、与党が採決を狙っています。
「未和は、深夜1時半まで仕事をして、午前6時には出社していた。41度の熱があっても点滴を打って仕事していた。『高プロは絶対反対だよ』と、娘が私の背中を押している」と強調します。
渡辺しのぶさん(56)も今月が「夫の命日」です。電機会社社員の夫は裁量労働で残業時間が管理されていませんでした。会社に「過労死ですよね」と訴えても、「裁量だから過労死ではない」と言われました。
夫が休日返上で一生懸命つくった資料に対しても「ここまで要求していなかった」と働きぶりまで否定されました。「高プロは、働きすぎて亡くなっても、働いた事実をなかったことにされる」
東京代表の中原のり子さん(62)は、小児科医の夫を過労自殺で亡くしました。「タイムカードもなく、正確な労働時間を証明できないなか、8年がかりで名誉回復し、労災認定を取りました。高プロは労働者の未来を奪います」と訴えます。
安倍晋三首相は、過労死家族の会の面会要請も冷たく拒否し、法案採決強行をねらっていました。しかし、家族の会は労働組合や「エキタス」など市民グループの行動にも参加。法案反対の世論が急速に広がり、国会会期内での採決強行はできなくなりました。
「労働時間データはねつ造、ニーズ調査も法案作成後に12人からしか聞いていない。こんな説明のつかない法案を、数の力で通すべきではありません」と寺西さん。「過労死をなくすという原点に立ち返り、遺族や労働者の要望を受け止めて徹底審議すべきです。私たちは、廃案になるまで頑張ります」