2018年6月30日(土)
「働き方改革」一括法に対する 倉林議員の反対討論
参院本会議
29日の参院本会議で成立した「働き方改革」一括法に対する日本共産党の倉林明子議員の反対討論(要旨)は次の通りです。
与党は、継続、徹底審議を求める野党の要求を打ち切り、野党3会派が提出した厚生労働委員長解任決議案を棚上げするという前代未聞の暴挙の上、厚生労働委員会を再開させて採決を強行しました。これは二重の暴挙であると断ぜざるを得ません。
本法案は立法事実が破たんしています。議論の出発点である労働時間のデータのねつ造、データの隠蔽(いんぺい)が発覚し、法案から裁量労働制を削除せざるを得ないという異例の事態となりました。2割にも上るデータを削除した後も、残りのデータに次々と誤りや記載ミスが見つかっただけでなく、削除後のデータに重大な乖離(かいり)が生じていたのです。さらに、管理監督者を一般的な働き方に含めたデータを労政審に提出していたことも発覚し、大臣は誤りだったと認めています。誤りを認めるのであれば、労政審に差し戻すのが当然ではありませんか。労政審も国会も冒涜(ぼうとく)し、国民世論も過労死家族の会の願いも踏みにじる本法案は廃案とするのが、立法府としての責任です。
本法案が過労死促進法であることが審議を通じて明らかになっています。高度プロフェッショナル制度は、労働時間規制をいっさい取り払うもので、戦後の労働法制上、やったことがない異次元の規制緩和となるものです。対象業務は限定するというものの、どんな業務が対象になるのか明らかになるのは法案成立後です。肝心の年収要件も高収入とは看板倒れで、実はパートも含む労働者の平均が根拠だったこと、通勤手当など固定的な手当もふくまれること、1075万円の総額は示されているものの、手取り額の実態は最後まで明らかになりませんでした。
この制度が最初に法案として盛り込まれた当時の厚労相は「小さく生んで大きく育てる」と発言していた通り、高プロの対象となる業務も労働者も大きく膨らむ危険が極めて強いのです。
さらに裁量権があるから自由な働き方が可能だと説明しながら、裁量権は法案で規定されていません。対象業務など省令や指針、通達で決める項目は90を超えています。こんな危険な白紙委任は到底認められません。
時間外労働の上限規制については、過労死ラインの時間外労働を合法化するものとなっています。罰則付きの上限規制が長時間労働を助長する危険性は極めて高いのです。
本法案で、雇用対策法の役割を大きく変質させることは重大な問題です。法律の名称を「雇用対策」から「労働施策」に変え、「労働生産性の向上」を目的に据え、「多様な就業形態の普及」が国の施策と位置付けられています。労働者保護法制が適用されない働き方も含む「多様な就業形態の普及」を国の施策に加えることは、無権利・低所得の労働者を増大させることにつながります。
2014年6月、この議場で過労死等防止対策推進法が全会一致で可決成立し、翌年には「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定されました。大綱策定からわずか3年、政府が過労死促進法ともいうべき本法案を提出すること自体、言語道断、到底許されるものではありません。過労死の悲劇を繰り返さないという総理の言葉は、過労死家族もすべての働く人々も欺くものだといわざるを得ません。国民を欺く安倍政権には一刻も早い退陣を強く要求します。