2018年7月7日(土)
仕事で精神疾患 初の500人超
「働き方」法で防止できず
17年度 労災補償状況
厚生労働省は6日、2017年度の労災補償状況を発表しました。仕事が原因でうつ病などの精神障害を発症して労災認定を受けた人は、前年度比8人増の506人で、過去最多を更新しました。500人の大台を超えたのは初めて。このうち自殺・自殺未遂は14人増の98人で、14年度の99人に次ぐ高水準でした。
残業100時間未満が多数
■精神障害
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精神障害の要因は、長時間労働など「仕事の量・質」が5人増の154人。パワハラを中心とする「対人関係」は12人増の112人と増加しています。
精神障害になった人の1カ月平均の残業時間は、100時間以上が151人に対して、100時間未満が211人でした。
今国会で成立した「働き方改革」一括法では、残業時間に過労死ラインと同じ月100時間未満などの上限を設けていますが、こうした高い上限では歯止めにならないことを示しています。
業種別では製造が87人、医療・福祉が82人、卸売り・小売りが65人、運輸・郵便が62人など人手不足で労働時間が長い業種が目立ちました。労災の申請は146人増の1732人と大幅に増え、5年連続で過去最多となりました。
運輸業最多 過労死40人
■脳・心臓疾患
一方、脳・心臓疾患の労災認定は7人減となったものの253人と高水準が続いています。このうち過労死は15人減の92人でした。
残業時間でみると、過労死ラインの1カ月100時間未満で労災認定されたのが5人(うち過労死1人)、2~6カ月平均で80時間未満が13人(同6人)もいました。
業種別では運輸・郵便が認定99人、過労死40人とともに最多でした。「働き方」法案で運輸業は上限規制が5年も先送りされた上、一般労働者より200時間以上長くなっており、名ばかりの上限規制となっています。
裁量労働制で脳・心臓疾患認定は4件(過労死2件)、精神障害は10件(5件)でした。
労災補償状況は毎年5~6月にかけて公表されていますが、今年は「働き方」法案が可決されてから発表されたことになります。
国は実態把握・防止策を
過労死弁護団全国連絡会議
過労死弁護団全国連絡会議は6日、厚生労働省が公表した昨年度の「過労死等の労災補償状況」について、川人博幹事長のコメントを発表しました。
請求件数が大幅に増加しているのは、職場の過労疾病・過労死の実態が深刻であることを意味しており、「この数字はまだ氷山の一角に過ぎない」と指摘。脳・心臓疾患が多い運送業・建設業が「働き方」法で適用除外とされていることは問題であり、「国は被害の実態把握に努め、過労死防止の取り組みを推進しなければならない」と強調しています。