2018年7月24日(火)
西日本豪雨 農業分野にも甚大な被害
当面利用できる支援制度
助成金・補助金・無利子融資も
西日本を中心とする豪雨で農林漁業に甚大な被害が出ています。農水省は被害への支援策を順次発表していますが、被害の深刻さからみて、不十分さや改善すべき点もあります。当面利用できる対策などについて紹介します。
農業用ハウス・機械などの復旧・再建
農家が農業用ハウスや機械等を復旧・再建する場合、「経営体育成支援事業」を活用できます。認定農業者などの施設・機械の導入にたいする支援ですが、災害時には被災農家に優先的に配分されます。国が融資残額の事業費の10分の3以内を補助し、県・市町村も上乗せします。ハウス内に流入した土砂の撤去(災害復旧事業の対象外)も適用になります。ただし、対象が認定農業者などに限定され、規模拡大や新たな技術の導入が迫られるなどの問題もあります。
過去の甚大な災害時には、対象を限定せず、被害前と同水準への復旧でも認める「被災農業者向け経営体育成支援事業」が発動されました。4年前の関東地方の豪雪災害では、この事業を適用し、ハウスの再建費用の9割を国・県・市町村が助成し、ハウスの撤去費用は農家負担なしで市町村が実施しました。今回の豪雨災害でも、「被災農業者向け経営体育成支援事業」の発動を含めて手厚い支援を求めていくことが必要です。
壊れたハウスなどの撤去については、災害廃棄物処理事業(市町村が実施)の対象になりうるので、市町村に相談しましょう。
農地の復旧 農業用施設・共同利用施設の回復
農地や農業用施設の復旧には、国・自治体・土地改良区などが事業主体となる災害復旧事業が適用されます。激甚災害に指定された場合に、被害の程度に応じて補助率がかさ上げされ、過去5年間の実績で見ると、農地では約95%、農業用施設約98%が国の負担で行われています。
復旧が急がれる場合には、災害査定など正式の手順を省略し、事業主体の判断で応急工事を行う査定前着工という制度があります。最小限の資料で農政局などに申請し、承認(早ければ即日)後に着工できます。
農協や農事組合法人などが所有する共同利用施設(法定耐用年数の1・4倍未満の施設に限る)の復旧についても、激甚指定の場合、事業費の最大90%まで補助が出ます。
営農・設備資金の確保
当座の営農資金、設備の再建資金などが必要となりますが、農林漁業セーフティネット資金(被災農業者の運転資金)、スーパーL資金・近代化資金(設備資金)などの災害関連資金の貸付利子が5年間実質無利子になります。
農水省は、既往融資の償還猶予などを政府は関係金融機関に要請しています。
営農再開への支援
被災ほ場の追加防除や施肥などの掛かりまし経費、次期策に必要な種子・種苗などの共同購入に要する経費、被災した集出荷施設の簡易な補修、他の集出荷施設への農作物の輸送に関する経費の2分の1以内が国から補助されます。領収書などを取りまとめ市町村や農協などが申請します。
水田での稲・麦・大豆などの栽培を断念せざるを得ない場合でも、水田活用の直接支払い交付金、畑作物の直接支払い交付金の対象になります。被害果樹や茶の植え替え、未収益期間に必要な肥料代・農薬代等の経費が助成されます。
被災した酪農・畜産農家に対して、畜舎の修理に対する支援(国補助2分の1以内)のほか、牛・豚肥育経営安定特別対策(牛・豚マルキン)の生産者積立金の納付が免除されます。自給飼料の被害を受けた畜産農家が粗飼料を購入する場合に要する経費が助成されます。酪農ヘルパーの被災農家への出役を支援します。