2018年8月6日(月)
原水爆禁止世界大会・広島 多彩なテーマで交流
立ち上がる人々
原水爆禁止2018年世界大会・広島は5日、広島市内各地でフォーラム、特別集会、分科会などをおこない、核兵器廃絶にむけて多彩なテーマで学び、交流しました。
核保有国に行動迫る
政府代表とNGOの対話
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フォーラム「核兵器禁止・廃絶へ、政府とNGOの対話」は、二人の政府代表らをパネリストに迎え、海外代表を含む150人が対話や経験交流をすすめました。
オーストリア欧州統合外務省軍縮軍備管理不拡散局長のトーマス・ハイノッチさんは、核兵器禁止条約の採択から1年で、60カ国が署名、14カ国が批准していることについて、「核軍縮に関わるこれまでの諸条約よりもハイペースで順調に進んでいる」と指摘。「50カ国が批准し、発効につながると信じている」と述べました。
アイルランド外務貿易省軍縮不拡散局副局長のジェイミー・ウォルシュさんは、核不拡散条約(NPT)の歴史を振り返り、「核軍縮のための交渉過程で、保有国はいろんなことを言ってくるだろうが、あきらめてはいけない」と指摘しました。
アメリカフレンズ奉仕委員会理事・軍備管理協会スタッフのアリシア・サンダーズ・ザクレさんは、核戦略をはじめとするトランプ米政権の危険な政策に対し「世界を良くしようと若い人たちが声を上げている」と指摘。原水爆禁止日本協議会(日本原水協)代表理事の高草木博さんは、核保有国に核軍縮の義務を履行させるのは世論の力であり、世界的な協力が不可欠だと強調しました。
米国でも運動 驚いた
新基地ノー 沖縄と連帯
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特別集会「核と基地のない日本、沖縄との連帯を」では、「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」や海外代表が米軍基地建設とのたたかいについて報告。沖縄・名護市辺野古への新基地建設を必ず阻止しようと語りあいました。
集会の趣旨説明を日本平和委員会事務局長の千坂純さんが行いました。
「オール沖縄会議」事務局長の山本隆司さんが報告。「日本国憲法下で、沖縄に米軍基地がつくられたことはありません。軟弱地盤などの問題もあり、辺野古に基地は絶対完成できません」と語りました。
米国の平和・軍縮・共通安全保障キャンペーンのジェラルド・ロスさんは、軍事的な威嚇をくりかえす米トランプ政権とのたたかいを紹介し、同時に「米国でも、沖縄の米軍基地建設に反対するたたかいがおこっています」と紹介しました。
香川県高松市の高校教員(28)は「沖縄の人が基地建設に反対し続ける理由がよく分かりました。米国でも沖縄の基地建設に反対して運動をしている人たちがいることを知り驚きました」と話していました。
非核化悲願 熱い関心
朝鮮半島とアジア・日本
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特別集会「非核平和の朝鮮半島とアジア―日本の役割」の会場は、立ち見が出るほどの参加者の熱気にあふれ、各国から参加したパネリスト4氏らが討論しました。
米国の平和・軍縮・共通安全保障キャンペーン議長のジョゼフ・ガーソンさんは、米政権に対して、非核化にむけた行程表の策定を求めるなどの運動を報告。韓国の全国民主労働組合総連盟の朴錫民(パク・ソクミン)さんは、「世界の非核化は人類の悲願であり、朝鮮半島の非核化はその出発点になる」と指摘し、「団結とたたかいで朝鮮半島、北東アジアの平和を勝ち取ろう」と呼びかけました。
中国・社会科学院のチェン・ジェさんは、中国でも南北・米朝首脳会談は高く評価されていると紹介。原水爆禁止日本協議会(日本原水協)常任理事の川田忠明さんは、朝鮮半島の非核化にむけて「核兵器はいかなる理由によっても使用されてはならない」という世論を圧倒的に広げることが重要だと強調。日本が「核の傘」から離脱し、核兵器禁止条約を批准することは、朝鮮半島の非核化を前進させる力になると語りました。
フロア発言で、秋田の代表は、朝鮮半島の非核・平和の流れに逆行する陸上配備型イージス反対の行動を報告しました。
ライブハウスで訴え
草の根の行動平和求めて
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「核兵器のない平和で公正な世界へ―草の根の行動」をテーマにした分科会には、120人が参加しました。
広島県原水爆被害者団体協議会理事長の佐久間邦彦さんは、「ヒバクシャ国際署名」について、街頭だけでなく、ライブハウスで音楽と被爆証言と署名をセットで訴えた体験を話しながら、「これまでにつながっていない人たちにどう広げていくか工夫が大事だ」と語りました。
平和・軍縮・共通安全保障キャンペーンのジェラルド・ロスさんは、アメリカ国内で核軍縮に向けたピースアクションや、署名活動、議員への働きかけを行っていることを紹介しました。
「黒人の命も大事だ」と活動しているカーリーン・グリフィス・セクターさんは、アメリカでの黒人差別の現状について語り、「さまざまな問題の根本には、暮らしに使われるべき予算が軍備に使われているという現実がある。それを変えるためには、連帯する必要がある」と語りました。
核兵器禁止条約に関するミニ講座と題した国際会議宣言起草委員長、冨田宏治さんの報告がありました。
政権の言い分通らぬ
9条改憲阻止一体に推進
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分科会「9条改憲ストップと核兵器禁止・廃絶」には初参加の人が多く、安倍9条改悪阻止の「3000万人署名」や「ヒバクシャ国際署名」をめぐる共同の広がりを交流しました。
東京慈恵会医科大学教授の小沢隆一さんが講演し、「9条改悪阻止、東アジアの平和・軍事同盟体制の打破、核兵器廃絶は一体の課題だ」と語りました。
埼玉県労働組合連合会(埼労連)の代表は「オール埼玉総行動」を県弁護士会、埼労連、連合埼玉が後援してきたと紹介し、「核兵器を廃絶し、憲法を守る共同をさらに前進させたい」と報告しました。
大阪・西淀川原水協の代表は、区民過半数5万人を目標にヒバクシャ署名の取り組みを報告。「禁止条約の意義を広げ、運動・世論を広げていこう」と語りました。
秋田で陸上配備型イージス計画に反対する団体などでつくる連絡会の参加者は、地元住民や保守層からも反対の声が広がっていると紹介し、「非核化は住民にとって切実な課題。朝鮮半島の変化で配備する政府のいい分は通らなくなっている」と強調しました。
ジャーナリズムの役割は
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核兵器のない世界に向けてジャーナリズムの役割を語る分科会が初めて行われました。
元日本テレビ記者で日本ジャーナリスト会議代表委員の隅井孝雄さんが講演。ビキニ環礁での核実験で第五福竜丸に加えて992隻の漁船が被ばくしていた事実を、南海放送などのメディアが市民の調査と連動して報道したことを指摘。「メディアと市民運動が合致すれば大きな力を発揮する。今でもメディアの調査報道は重要だ」と語りました。
会場からは、「市民運動があまりメディアでとりあげられない」「政府を批判するコメンテーターなどへの圧力があるのではないのか」などの意見が出されました。
隅井さんは、政府・与党が報道をチェックしていることや、“政府批判はけしからん”という電話が集中的に寄せられる実態もあると話し、「いい報道だと感じたら手紙やメールで番組を励ますことも重要だ」と語りました。