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2018年8月7日(火)

主張

海洋のプラごみ

実効性ある対策に本腰入れよ

 プラスチックごみによる海洋汚染が大きな問題になっています。欧州各国を中心に使い捨てのプラ製品の規制に向けた動きも強まっています。自然に分解されにくいプラごみは地球環境にかかわる深刻な問題です。日本は海に大量のプラごみを流出させている国の一つですが、政府の対応は大きく立ち遅れています。実効性ある対策をすすめることが必要です。

欧州で進む取り組み

 プラスチックのストローが鼻に詰まったウミガメが救出される様子を撮った中米コスタリカでの動画が、ネットで大きく拡散したことがありました。ストローは問題のごく一部にすぎません。

 プラごみの最大の問題は、海洋生物が餌と区別できずに取り込むことです。生物の体内から小さなプラ破片が検出されることが相次いでいます。魚やエビ・カニなど甲殻類、二枚貝などを食べる生物にも影響が及びます。水鳥やクジラなどがより大きなプラスチックを摂食することも起きています。

 レジ袋やペットボトルなどが人間の生活圏から川を通じて海に流れ込み、紫外線で分解されたり、波の力で細かく砕かれたりして海洋に流れ出した5ミリ以下の「マイクロプラスチック」や、洗顔料、化粧品などに使用されている「マイクロビーズ」は、特に影響が大きいといいます。

 国連環境計画(UNEP)は6月、プラごみの廃棄量が年間約3億トンに及ぶという推計を発表しました。そのうち800万トン以上が海に流出しているといわれます。

 カナダで6月に開かれた主要7カ国首脳会議(G7)でも大きな議題の一つとなり、「海洋プラスチック憲章」がまとめられ、英・仏・独・伊の欧州4カ国とカナダが署名しました。海のプラごみ量を減らすために、2030年までにすべてのプラ製品を再利用可能か、リサイクル可能なものにする、不必要な使い捨てプラ使用を大幅削減し代替品も環境への影響を考慮する、などを盛り込みました。期限と数値を具体的に示した対策として大切な憲章です。

 ところが、日本と米国は署名を見送りました。中川雅治環境相は「調整を行う時間が足りなかった」といいましたが、3年前の首脳会議からの懸案事項であり説得力はありません。産業界への配慮という批判が上がっています。

 日本のプラ廃棄物は全体で年700万トンを超え、米国、中国についで3位という推計があります。半分以上を焼却処分していますが、川の下流や海岸には多くのペットボトルなどが捨てられているところがあるように、回収は十分に行われていません。

 現行の法制度の下でプラごみの流出がなぜ起きるのか、政府は徹底した調査を行い、本腰を入れた対策を急ぐべきです。

社会のあり方も問われる

 先の通常国会で、マイクロプラスチックの使用を抑えるように企業に努力義務を課すなどした改正・海岸漂着物処理推進法が全会一致で可決・成立しました。政府が積極的に取り組むとともに、企業や業界に社会的責任を果たさせていくことが重要となっています。プラごみを減らす課題とともに、不必要なプラ製品を生産しないことが必要です。大量製造・大量消費という経済・社会のあり方そのものが問われています。


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