2018年8月10日(金)
核廃絶 国連の優先課題
長崎市平和式典 グテレス事務総長あいさつ
国連のグテレス事務総長が9日、長崎市主催の平和式典で行ったあいさつ(要旨)は次の通りです。
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長崎は希望と力強さの明かりであり、市民が不屈であることの象徴です。原子爆弾は爆発の直後、さらにその後数年、数十年にわたり、数万人を殺傷しましたが、みなさんの精神を打ち砕くことはできませんでした。
長崎・広島の原爆を生き抜いた被爆者は日本で、世界中で、平和と軍縮の先頭に立ってきました。被爆者が意味するのは、破壊された都市ではなく、築こうとする平和な世界です。被爆という惨事の中から被爆者は、全人類のために自ら声を上げました。私たちはその声に耳を傾けなければなりません。
広島を、長崎を繰り返してはなりません。これ以上被爆者を生み出してはなりません。
残念なことに、被爆73年、核戦争の脅威はいまも続いています。日本をはじめ数百万の人たちが、想像を絶する大量殺りくという恐怖がもたらす陰のもとで暮らしています。
核兵器保有国は多額の資金を費やして核兵器の最新鋭化を図っています。2017年には1兆7000億ドル以上を軍事費に使い、冷戦終結以来最大となっています。それは世界の人道支援に必要な金額の80倍です。
一方で、軍縮の過程は遅れ、停止するに至っています。多くの国は昨年、核兵器禁止条約を採択して、その不満を示しました。
あらゆる兵器の削減が急ぎ求められていますが、ことに核軍縮が必要です。そのことを背景に、私は5月、全世界の軍縮提案を行いました。
軍縮は国際の平和と安全の維持の推進力です。国家安全保障を確保する手段です。人道にかかわる諸原則を擁護し、持続可能な開発を促し、市民を保護するのに役立ちます。
私が軍縮で掲げる課題の根拠となっているのは、核による絶滅の危険を弱め、あらゆる紛争を防止し、兵器の拡散や使用が市民にもたらす惨害を減らすような具体的措置です。
そうした課題が明らかにしているのは、核兵器は世界の、国家の、人間の安全保障を損なうということです。核兵器の完全廃絶は、国連が最も重視する軍縮の優先課題です。
長崎で私はすべての国に、核軍縮を約束し、緊急課題として目に見える前進を開始するよう呼びかけます。核兵器国にはそれを導く特別の責任があります。
長崎と広島から、日々平和を優先し、紛争の防止と解決、和解、対話に努力し、紛争と暴力の元凶に立ち向かうことを思い起こしましょう。長崎を核兵器の惨害を受けた地球上で最後の場所にするよう決意しましょう。私はそのためにみなさんとともに努力します。