2018年9月5日(水)
安倍首相の自画自賛 ―その中身は―
賃上げ 数字をつまみ食い
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安倍晋三首相は、安倍政権の5年半で国民の懐が潤ったと誇ります。最近の主張はこうです。
(1)経団連の幹部企業への調査で4分の3以上の企業が年収ベースで3%以上の賃上げ(2)連合の調査で中小企業の賃上げ率が過去20年で最高(3)国民総所得(GNI)は5年余りで65兆円以上増加(8月12日の山口県での講演)
実態は全く逆です。首相が触れない統計にこそ真実が表れています。「毎月勤労統計調査」の実質賃金は安倍政権の5年間のうち4年度で前年度比マイナス。「家計調査」の消費支出も直近4年連続でマイナスです。どちらも政府調査です。国民の暮らしは安倍政権の下でますます苦しくなっています。
首相が挙げた(1)~(3)も、検証不能なものや都合のいいデータのつまみ食いです。
(1)について、経団連は調査結果を公表していません。国民が検証できないデータを用いること自体問題ですが、経団連幹部企業というごく一握りの超巨大企業の賃上げ結果を日本全体の傾向のように語るのは全く不見識です。昨年末に首相が打ち出した「3%以上の賃上げ」の“実績づくり”のための数字にすぎません。
(2)は、連合の2018年春闘の回答集計結果です。同集計の、大企業労組を含む賃上げ率(定期昇給分を含む)は平均2・07%。「3%以上」という首相目標には遠く及びません。ところが首相は2・07%には触れずに、組合員300人未満の中小組合の結果だけを持ち出しているのです。
ちなみに、中小組合の基準は企業規模ではないので、これを「中小企業」と呼ぶのは不正確です。
(3)のGNIには、個人の所得だけでなく企業のもうけも含まれます。GNIが増えれば単純に庶民が豊かになるというものではありません。(随時掲載)