2018年9月24日(月)
主張
文科省の汚職事件
政権の責任が改めて問われる
私立大学への支援事業などをめぐる贈収賄・接待汚職事件で、文部科学省の戸谷(とだに)一夫事務次官らが辞任しました。同事件では、すでに同省の前局長ら2人が収賄容疑で逮捕・起訴されています。戸谷次官ら複数幹部は、贈賄側人物から不適切な接待を受けていたことも、今回公表された内部調査資料で確認されました。財務省では、公文書改ざんやセクハラ問題で事務次官らの辞任や処分が相次ぎましたが、今回の事態も安倍晋三政権下における省庁幹部の退廃・劣化ぶりを浮き彫りにしています。次官や局長の任命権を持つ安倍政権の責任が改めて問われます。
接待漬けが浮き彫りに
一連の汚職事件は、東京地検特捜部が、文科省の科学技術・学術政策局長(当時)を受託収賄容疑で7月に逮捕したことなどが発端です。前局長は、子どもを東京医科大に不正合格させてもらったことの見返りに、同大を文科省の支援事業の対象校に選定した疑いが持たれています。前局長と同大学を仲介した元会社役員(贈賄で逮捕・起訴)は、別の同省局長級幹部(収賄で逮捕・起訴)に対しても高額な接待を繰り返し、自分の事業に便宜を受けていたことなどが明らかになっています。
深刻なのは、2人を管理監督する立場にある事務方トップの戸谷次官自身が審議官時代に、起訴された局長級幹部や元国会議員らと一緒に元会社役員から接待を受けていたことです。文科省内に設置された検証チームの調査では、元会社役員から接待された幹部職員は戸谷次官の他に少なくとも4人いました。銀座のクラブの飲食代、タクシー代など“接待漬け”の状況が調査資料に生々しく記されています。一晩10万円も丸抱えされた幹部もいました。戸谷次官らは国家公務員倫理規程に違反したなどとして処分され、同次官と初等中等教育局長は辞任しました。
贈収賄の舞台となった私立大学への支援事業は、「競争的資金」とされる補助金の配分をめぐり行政の裁量権限が拡大し、選定が不透明と指摘されていました。事件の徹底究明とともに、異常な接待をまん延させ、汚職を引き起こした構造的問題の解明は不可欠です。
教育にかかわる行政に直接たずさわる官庁幹部のモラル欠如に、国民の不信は高まっています。文科省では、組織的な天下りが問題になり昨年、当時の事務次官が引責辞任しました。後を継いだ戸谷次官が汚職・接待で辞任したことに衝撃が広がっています。
林芳正文科相は「信頼回復に努めたい」などといいますが、自らの責任について明言しません。ごまかし続けることは通用しません。
他省庁を含め徹底調査を
疑惑は文科省だけにとどまりません。本紙が入手した元会社役員の「接待対象リスト」には、6省庁の職員、国会議員の氏名が記載されています。他省庁についての調査はどうしても必要です。
安倍首相をめぐる「森友」「加計」問題でも、国民は首相の説明に納得していません。国政を私物化し、行政をゆがめた大問題に全く反省がなく、疑惑を明らかにしようとする動きさえ押さえ込もうとする安倍政権の姿勢は、相次ぐ官僚の不祥事と無縁と言えるのか。臨時国会では、汚職問題とともに「森友」「加計」問題の徹底解明を欠かすことはできません。