2018年10月6日(土)
なお 元の暮らし遠く
北海道地震1カ月 畠山氏ら被災地訪問
|
最大震度7の北海道地震発生から1カ月。41人が犠牲になり、458人が避難所での困難な生活を余儀なくされています。日本共産党中央委員会が設置した北海道地震対策本部(本部長・小池晃書記局長)の畠山和也事務局長(前衆院議員)は5日、被害が甚大な震源地の安平(あびら)、厚真、むかわ3町を訪れ、被災者へのお見舞いと切実な要望を聞いて回りました。
安平町の三浦恵美子、厚真町の伊藤富志夫、むかわ町の北村修各町議が同行しました。
安平町に入るや携帯電話から緊急地震速報が響きました。震度5弱の余震です。
500頭の乳牛や肥育牛を飼い、70頭が乳房炎にかかった金川牧場。金川幹夫代表取締役は、停電で工場が操業せず、5日間の間に350万円分の生乳を廃棄しました。
「電力行政であってはならないことが起きた。地震が頻発しているのに原発を動かすことが本当にいいのか。原発事故や今回の停電のような事故を起こさないため、野党が安倍政権に注文をつけてほしい」と話します。
地震の土砂崩れで戦後最大の山林被害になった厚真町。産業経済課の宮久史主幹から土砂崩れ被害を、同町にある苫小牧広域森林組合でも森林所有者の意欲が減退したと訴え。「森林を管理するためには道路が欠かせませんが、先人たちがつくってきた無数の林道がなくなった。大動脈はあるのに毛細血管が失われた」と答えました。
むかわ町では、一部損壊判定を受けた家具店や開店前の居酒屋を回りました。「被災した建物を撤去してもらわないと商売にならない」(女性店主)、「一部損壊にも補助が出れば助かるんだけど」(家具店の女性)の声が。町商工会では山崎満敬会長と懇談しました。
畠山氏は苫東厚真火力発電所の耐震強度が震度5だったことを知らなかった高橋はるみ知事を批判し、「知事は以前、北海道電力幹部から“個人献金”の形を装い、献金を受けていました。国や北電に顔を向けても、道民に背を向ける知事はごめんです」と語りました。
松橋ちはる道議候補が同行しました。
道議会での論戦や被災地の現状、基幹産業の農業を追いました。
|
苫東厚真「耐震基準は震度5」
知事「知らない」なんて
高橋はるみ北海道知事が北海道電力苫東厚真火力発電所の耐震基準が「震度5」相当だったのを“知らなかった”と答えた問題で、被災者・道民の怒りが湧き上がっています。
9月21日の代表質問。日本共産党の宮川潤道議が再々質問まで重ね、「知事は知っていたのか。知っていたとするなら、震度5の想定でよいと考えたのか」と追及。答弁調整の時間を求め、協議すること5分。消え入るような声で「発電整備の情報提供は受けていない」と述べ、“知らなかった”と認めました。さらに、耐震設定は「北電と、エネルギー政策に責任を持つ国」の問題と、責任を転嫁してみせました。
続く27日、質問に立った真下紀子党道議が道内すべての火力発電所の耐震性能を知事は承知しているのかと追及。高橋知事は、北電に安全管理の徹底を求めると言うだけ。道と自身の情報把握については一切答えませんでした。
その一方で、高橋知事は同11日、秋元克広札幌市長と経産省幹部職員、北電役員と並んでJR札幌駅前で15分間宣伝し、「2割の節電を」と声を張り上げていました。
|
酪農家 搾乳できず多額の損害
牛の声「耳から離れぬ」
北海道地震で揺れの被害が少なかった道東地域でも、全域停電(ブラックアウト)で酪農などの農業が深刻な被害を受けました。
ホクレン農業協同組合連合会は、停電で乳業の工場や電動搾乳機が動かず、地震発生から5日間で生乳約2万トンの集荷が止まり、被害額は約20億円に上ると発表しました。
乳牛は搾乳を毎日しないと乳房炎を発症します。搾乳機が使えず乳房炎になる牛が急増し、死ぬ牛も出ました。9月、酪農家から受け入れた生乳は29万1036トンで、昨年比で5・2%余減少したといいます。
約10万頭と、国内の自治体で最大級の乳牛を擁し、酪農が基幹産業の別海(べつかい)町。被害と怒りが広がっています。
「当初はすぐ回復するだろうと思っていたが、全道で停電が起きていると知り、これは長引くかもしれないと覚悟した」と語るのは、「岩崎牧場」の岩崎和雄さん(65)。「電力会社から連絡もなく、いつ電気がつくのか分からないのはつらかった」と話します。
8日夜に停電は解消しますが、搾った生乳は乾乳(搾乳を数カ月休む期間)直後の粘度の高い状態で、とても出荷できません。牛たちを検査すると、45頭のうち約10頭が乳房炎にかかっていました。
「元に立て直すまで1週間かかり、出荷できなかった生乳は7トン。道東の電気はこちらで発電していると思っていたのに、まさか苫東厚真に依存していたとは。一極集中は問題だ」と指摘します。
70頭の牛を飼育する「森高牧場」の森高哲夫さん(67)は、近隣の農家から自家発電機を借りて停電を何とかしのぎました。
電力の回復後、新しい自家発電機を購入しました。「全域停電前提の原発推進でなく、道の責任で自然エネルギーによる地産地消に転換していくことが必要だ」と森高さん。
数十頭が乳房炎になった牧場で働く男性(38)は「乳が搾れないと1、2日で乳房が張って、牛が苦しそうな声を上げるんです。鳴き声が耳から離れず、本当につらかった」と苦しげに語ります。
男性が働く牧場では栄養価の高い配合飼料を減らすことで、乳の生産を抑える努力をしました。「電気の回復後も、体調や乳の量が回復しきらず、休みに入らせた牛もいます。何百万円の損害だと思います」と言います。
高橋はるみ知事が、全域停電の原因となった火力発電所の耐震基準を知らず「国と北電の問題」と責任逃れをしていることに、男性は「北海道全域で停電なんて大変な事態を起こしておいて、道が知らんぷりはない。電力会社に対策を講じられる立場に居たんじゃないのか」と憤りました。
|
液状化 傾く建物に不安
「調査と対策を急いで」
地震工学会調査団が10トンダンプカー約750台分の積載量の4500立方メートルの土砂が液状化したという札幌市清田区。市は「本格的な復旧工事は来春以降」と説明し、多くの倒壊家屋は放置されたままの状態です。
清田地域の渡部耕平さんは、会社の事務所として使っていた建物の下から大量の水と土砂が噴き出し、建物が20センチ傾いたと訴えるも、市は「一部損壊」と判断。入り口のドアは隙間ができ、窓も床もゆがんでいます。いまは梁(はり)と床の間に鉄のパイプを何本も入れて支えています。
市から次々職員が調査に訪れましたが、「何かあったら逃げてください。状況を上には伝えますが」と話すだけです。
渡部さんは自己負担で、家の周りの地盤の状態を調査。空洞になっている疑いがあるとの結果が出ました。
「この下は昔、沢だったとわかりました。とにかく地盤調査してほしい。そんなに難しい調査ではないのに。早く判断してほしい」と語気を強めます。
震災後区内を駆け巡り、約600軒の被災者宅を回って要望を聞いてきた日本共産党の吉岡弘子市議候補。「これからも新たな要望が出されたら文書にして区長に提出します」と表明しました。
こうした中、液状化がひどかった里塚地域の住民が4日、市や国に要望する「里塚中央災害復興推進の会」を結成。市に仮設住宅の入居条件緩和や雪が降る前の住宅の安全対策を求めていきます。
吉岡氏は3日、伊藤理智子、池田由美両党市議と一緒に盛田久夫里塚中央町内会長と懇談。政府交渉を報告し、連携を強めましょうと話し合いました。
吉岡氏は言います。「市民が自ら要望組織を立ち上げなければならないほど国や道、市の対応が遅れています。私たちも可能な手だてはすべてやり尽くし、一歩でも二歩でも要望が前進するよう全力を挙げます」
(特集は、北海道・熊林未来、伊藤佑亮、高橋拓丸、名越正治が担当しました)