2018年10月11日(木)
シリーズ許すな「派遣切り」再来
直接雇用を実現
KBS京都労組
多くの企業で派遣受け入れ期間の区切りとなる10月、KBS京都放送労働組合は、派遣労働者の女性組合員の直接雇用を実現しました。改悪された派遣法のもとでも、労働者と労働組合のたたかいで雇用を守る道を切り開いています。(田代正則)
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3年前の2015年9月30日、安倍政権による改悪派遣法が施行され、派遣先企業は最長3年の派遣可能期間を職場単位で延長できるようになり、3年を超えても、派遣労働者を入れ替えれば、直接雇用を申し込まずに派遣を受け入れ続けられます。
3年で契約切り
個々の派遣労働者にとっては、同一職場で3年までしか働けないため、改悪法施行から3年の区切りとなる10月以降、直接雇用されなければ、「派遣切り」が再来する危険があります。
直接雇用されることになったのは、平澤絵理さん(36)。3年前の10月、KBS京都(京都市上京区、社員129人)に派遣され、働いていました。これまで事務作業など五つの職場に派遣されましたが、どの職場でも3年程度で契約打ち切りを繰り返してきました。
平澤さんは、KBS労組から「直接雇用になった先輩がいる」と声をかけられ加入しました。
改悪派遣法では、職場の過半数を組織する労働組合が派遣期間の延長に反対しても、会社はその意見を聴取さえすれば、延長を強行できます。
指針を最大活用
KBS労組は、派遣労働者の行っている業務が放送局に欠かせないものであり、派遣は「臨時的・一時的業務」に限るという大原則に反すると強調。改悪派遣法のもとでも、派遣先企業に雇用の安定に配慮するよう求める指針があることを最大限活用し、組合員の直接雇用化を要求、交渉して実現しました。
平澤さんは、「女性は年齢を重ねると、派遣の紹介先も減っていきます。職場には、直接雇用された先輩が一緒に働いているので私も働き続けたいと思っていました」と喜びます。
リーマン・ショックに端を発した大量の「派遣切り」から10年。安倍政権の派遣法改悪から3年がたち、派遣労働者の入れ替えが再び大規模に開始される時期を迎えています。「派遣切り」の再来を許さない労働者、労働組合のたたかいをシリーズで追います。
安定雇用実現へ 労組の力
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KBS京都放送で、派遣労働者をへて10月から直接雇用になる平澤絵理さんの仕事は、放送前の映像をチェックする「プレビュー」と呼ばれる業務です。
映像の乱れをはじめ、差別的な表現などもあれば問題提起します。「昔の映像には、今では使えない言葉が含まれていることがあります。最近も、バラエティー番組の出演者のTシャツに問題のある言葉が書いてあり、私が指摘して差し替わったことがありました」
経験と知識必要
プレビューは、放送局の信頼にかかわる日常業務であり、派遣の原則である「臨時的・一時的業務」とはいえません。長く務めることで蓄積する経験と知識が重要です。ところが、KBSのプレビューは今年初めまで正社員2人と派遣労働者6人で行っており、経験の継承が課題になっていました。
平澤さんは「3年で、やっと仕事が分かってきたところです。もっと長く働けばステップアップできます」と強調します。
組合は、派遣期間の区切りとなる10月に、職場で最初に3年を迎える平澤さんを直接雇用にしようと準備を進めていました。
8月28日、会社から組合へ派遣可能期間を延長したいと通知書が送られてきました。
組合は意見聴取を受けるにあたって、何人の派遣労働者をどの部署のどんな業務につけているのか会社をただしました。
放送局には23人の派遣労働者がいることが分かりました。このうち、すでに過半数の13人が組合に加入しています。
組合は、派遣受け入れ期間の延長に反対し、直接雇用・無期雇用にすべきだと意見表明。平澤さんについても直接雇用の要求書を提出しました。
9月18日、会社は職場での派遣受け入れ延長を表明する一方、個々の派遣労働者が働いて3年たち、労働組合から申し出があった場合は、直接雇用する方針だと答えました。
平澤さんは「これまでの職場では労働組合の存在も知りませんでした。私たちの要望を聞いて取り組んでくれたのはKBS労組が初めてです」と話します。
派遣ゼロめざす
KBS労組はこれまで13年に2人、14年に1人の派遣労働者を直接雇用に転換しています。
組合は改悪派遣法に対抗して、16年春闘で、直接雇用化を継続するよう要求し、会社は「派遣社員の組合員について直接雇用の要求を出せばこたえる」と回答。直接雇用化制度ができ、今年4月に1人が直接雇用になりました。違法派遣の「偽装請負」で19年働いていた女性も、労働局に申告して是正され、今年から直接雇用になっています。
古住公義副委員長は「派遣労働者を順次直接雇用にして『派遣ゼロ』をめざします。引き続き未加入者を組合に迎え安定した雇用を求めていきます」と話しています。
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