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2018年10月14日(日)

主張

FTAと「TAG」

この偽装工作は見過ごせない

 安倍晋三首相は9月末のトランプ米大統領との会談で、日米間の「物品貿易協定(TAG)」の協議に入ると発表しました。その際「TAG」はあらゆる物品やサービスを対象にする「自由貿易協定(FTA)」ではないと説明しましたが、その後、共同声明の正文である英語の発表文や在日アメリカ大使館の翻訳文では「TAG」の言葉が全く登場せず、安倍政権が否定する「FTA」そのものである「物品とサービスなどの貿易協定」と書かれていることが明らかになりました。首相の主張に合わせて、言葉そのものがねつ造された可能性がある大問題です。

ウソに合わせたねつ造

 安倍首相はこれまで国会などで、トランプ政権が一方的に離脱した、日本など12カ国による「環太平洋連携協定(TPP)」への復帰を求めることを繰り返すとともに、たとえ2国間交渉をする場合でも「FTAやその予備交渉はしない」と繰り返してきました。「TAG」であれ2国間交渉を認めたこと自体、安倍政権の経済外交の破綻を示すものですが、「TAG」という言葉をねつ造し、「FTA」ではないと言い張ったことは、首相のウソに合わせて外交を偽った論外という他ない事態です。

 9月26日の日米首脳会談の後、安倍政権が発表した日本語の共同声明には「日米物品貿易協定(TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)について早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する」と記されています。これを根拠に安倍首相は、「TAGは包括的なFTA交渉ではない」と強調しました。

 ところがアメリカ政府が発表した英語の正文には「TAG」の言葉はなく小文字の「goods」(物品)に続けて「as well as」(同様に)「other key areas including services」(サービスを含むその他重要分野)について「negotiations」(交渉)するとなっています。アメリカ大使館が発表した翻訳文でも、「物品、またサービスを含むその他の重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する」となっていて、「TAG」の言葉は登場しません。

 FTAとは、現在のWTO(世界貿易機関)のもとになったGATT(関税・貿易一般協定)で、特定の国や地域に対し、物品やサービスの貿易を容易にするものと定めています(24条など)。安倍首相が合意した日米の交渉が、国際的にみてFTAの協議そのものであることはあまりにも明白です。ペンス副大統領などアメリカ政府の首脳も繰り返し「FTA」であると明言しています。

TPPや「森友」でも前歴

 「包括的」な交渉でないから「FTA」ではないという安倍首相の説明は、国際的に見れば通用しません。

 安倍首相はTPPを結ぶ際にも「農産物は守る」といいながら関税の引き下げや輸入枠の拡大を認めました。「森友」問題や「加計」問題でも「関与していない」という首相のウソに合わせて、国会での虚偽答弁や公文書の改ざん、ねつ造が繰り返されました。

 ウソで固めた日米交渉が農産物や自動車、サービスなどの輸入自由化に行き着き、日本の主権が身ぐるみはがされるのは目に見えます。日米交渉を中止させ、安倍政権を退陣に追い込むときです。


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