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2018年11月9日(金)

主張

「水産改革」法案

浜に混乱と荒廃をもたらすな

 安倍晋三内閣が、「水産改革」法案(漁業法等改定案)を閣議決定し、国会に提出しました。安倍首相は所信表明演説で「次は水産改革」だといい、漁業のあり方やルールを定めた漁業法を「70年ぶりに抜本的に改正」すると表明しています。漁民の共同を基本に営まれてきた沿岸漁業と水産資源管理などを、「漁業の成長産業化」の名で、企業利益を優先する方向に変えるものです。

沿岸漁業の衰退を招く

 漁業・水産業は、漁民の生業(なりわい)を基礎に企業経営も含めて営まれる地域の基幹産業です。なかでも沿岸漁業は、政府の1次産業軽視のもとで、さまざまな困難を抱えながら、地域の特徴を生かした多様な漁法、多種の漁獲・養殖が展開され、漁村社会と豊かな魚食文化を支えてきました。

 この大事な役割は地元に多くの漁業者が暮らし、漁業に携わってこそ発揮できるものです。戦後の漁業制度はその立場から、沿岸漁業者や協同組合である漁業協同組合の権利を第一にしてきました。

 「水産改革」は、そこに企業優先のルールを持ち込むもので、中小漁業者を追い出し、漁協を弱体化させ、漁場利用の混乱、漁村の衰退を招きます。

 「改革」法案の主な内容は、漁獲量による資源管理の導入、船のトン数規制の撤廃、漁業権のルールの根本的な変更などです。

 資源管理では、現在8魚種に限られている漁獲量割当制度(TAC)の対象を大幅に増やすとしています。また、遠洋・沖合漁業では漁船のトン数規制をなくし、大型化をすすめることを盛り込んでいます。中小・零細漁業者が締め出され、取りすぎによる資源の減少につながりかねません。

 養殖漁業では、都道府県知事が漁協に一括して与えてきた漁業権を、漁協を通さずに地域外の企業などに個別に与える方式に変更します。養殖漁業への企業参入が広がり、地元漁業者が狭い漁場に追い込まれるのは必至です。漁業権が分割されることで、漁場の管理も困難になるでしょう。

 漁場利用の調整を担う漁業調整委員会は、公選制から知事による任命制に変えます。漁業権の免許などに沿岸漁業者の意見が反映しにくくなるのは避けられません。

 「水産改革」は、「企業が一番活躍しやすい国」をめざす「アベノミクス」の水産版です。新たなもうけ口として漁業・養殖業への参入をねらい、漁船の大型化で漁獲の拡大をめざす大企業・財界の身勝手な要求を優先し、沿岸・零細漁業は衰退してもかまわないという無責任な立場です。

現場置き去り許されない

 このような「改革」案が、当事者である沿岸漁民や漁協に事前説明もなく、財界主導の「規制改革推進会議」の一方的で短期間の審議で押し付けられようとしていることは重大です。5日に国会内で開かれた沿岸漁民フォーラム「『水産改革法案』と沿岸の危機」では、参加者から「現場の納得を得ないまま強行するのか」「海を企業に売り渡すのか」という政府への不信、怒りが噴出しました。

 日本共産党は、漁業関係者の納得と参加のもとに、資源を生かし・浜に根ざした持続的な生産を保障し、漁民の経営と漁村を維持・発展させる政策への転換を強く求めます。


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