2018年11月13日(火)
入管法改定 弁護士が警鐘
新制度でも人権侵害続く
野党ヒアリング
残業代が時給300円、朝から深夜までの作業が連日続いた―。12日の野党合同ヒアリングでは、日本で働く外国人技能実習生らが参加し、過酷な人権侵害の実態を報告しました。
岐阜県の縫製工場で働くカンボジア人の女性(33)は、午前8時半から、翌日午前2時まで働くことも。「毎日毎日、とても疲れるまで働いたが、1カ月の基本給は6万円、残業代は時給300円という状態が1年続いた」と涙ながらに訴えました。
外国人技能実習生の深刻な状況を報告した大坂恭子弁護士は、使用者が正確な労働時間を一切把握せず、記録も作成しない労務管理が横行していると指摘。最賃割れの残業代を「内職」「出来高」などの言葉でごまかす事例も多く、「技能実習制度の廃止を前提に、次の制度を組み立てる必要がある」と訴えました。
訴訟を起こした中国人技能実習生の代理人を務めた指宿昭一弁護士は「大変な裁判を弁護士に頼んで提訴できる事案は氷山の一角。ほとんどの人は泣き寝入りしている」と強調。政府が今国会で成立を狙う出入国管理法改定案については「新しい制度でも、技能実習制度と同じことが起こる。ブローカーが介在して、中間搾取を行い、人権侵害を行っても、それに対する手当てがない。そのままの形で制度を通してはいけない」と警鐘を鳴らしました。
国に重要事項“白紙委任”
改定案の危険性
13日の衆院本会議で審議入りする出入国管理法改定案は、外国人労働者の受け入れ拡大を目的とするもので、新たな在留資格「特定技能1号」と「特定技能2号」を設けるのが主な内容です。
1号は「相当程度の知識または経験」を必要とし、家族の帯同を認めません。2号は1号より熟練した労働者を想定し、要件を満たせば家族の帯同を認めます。
1号の労働者を支援するため「登録支援機関」を新設します。支援機関は1号の労働者に住宅の確保や労働条件・生活などを支援します。
改定案の内容はこれだけ。在留期間さえ明記されていません。受け入れ分野やその規模、受け入れ要件、判断基準など、その他の重要事項は全て「省令以下で定める」としています。まさに政府への白紙委任です。
政府によると、1号の在留期間は通算5年が上限。2号は1~3年で何度でも更新可能。どちらも在留資格取得には所管省庁が定める技能や日本語の試験への合格が必要です。1号は技能実習を3年修了した場合、試験が免除されます。
政府は建設や農業、介護など14分野で受け入れを検討中。初年度の受け入れ規模は4万人を見込みますが、どちらもその根拠等を明らかにしていません。
日本で働く外国人労働者は現在128万人。うち約30万人を技能実習生が占めます。人権侵害などが多発し、今年上半期だけで約4000人が失踪しており、実態を放置したままの外国人労働者受け入れ拡大には、人権侵害を拡大する恐れがあります。