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2018年11月14日(水)

主張

「入管法」審議入り

「使い捨て」深刻化の危険明白

 日本で働く外国人の受け入れを拡大するための出入国管理法(入管法)改定案が衆院本会議で審議入りしました。外国人を無権利状態で働かせる実態がいまでも大問題になっているのに、法案は現状にメスを入れるどころか、それを温存し、外国人労働者の「使い捨て」を深刻化させる重大な内容です。しかも対象業種や受け入れ規模をはじめ重要項目を条文に明記せず、質疑に必要な重要データを出し渋り続けるなど、審議の前提は欠いたままです。安倍晋三政権は来年4月施行に固執し、今国会成立を狙いますが、拙速な審議で強行することは許されません。

過酷労働招く制度を放置

 入管法改定案は、新たな在留資格として「特定技能」を設けることなどが柱です。特定技能1号は、在留期間を最長通算5年とし、家族の同行は認めません。「熟練した技能」が要件の特定技能2号は長期滞在可能で、家族帯同も認めるとしていますが、定義や運用は不明確です。1号の対象について政府は農業、建設など14業種を検討しているとしますが、法案には書き込まれていません。

 職場や住居の選択の自由、安定した雇用や賃金の確保、悪質なブローカーの介在排除など、人権と人間としての尊厳を守れるかどうかの保証は全くありません。本会議の質疑でも、首相らはまともに説明できませんでした。法案の体をなしていない、ずさんさが改めて浮き彫りになるばかりです。

 なにより問題なのは、国際社会から「奴隷労働」と批判を浴びている現在の外国人技能実習制度の見直しに手をつけようとしないことです。同制度は、日本で習得した技能を母国に持ち帰ることが「建前」です。しかし、外国人労働者を「安価な労働力」として利用しているのが実態です。

 過酷な処遇に耐えきれず、「失踪」した実習生は、政府の調査でも昨年で7089人にのぼり、今年上半期でも既に4279人になるなど激増しています。「残業代の時給300円、1日16時間労働を強いられた」「いじめやパワハラにあった。飛び降り自殺も図った」という悲痛な証言は後を絶ちません。来日の際に背負った多額の借金に縛られた上、実習先の雇用主に逆らえない構造的問題などから、非人間的な扱いをされても声を上げられない人たちは、さらに多く存在すると指摘されています。

 法務省は昨年、「失踪」した実習生2892人から動機などの聞き取りを行いましたが、詳細な資料の提出を拒否しています。外国人労働者の置かれている実情を把握することは、法案を審議する上で絶対に欠かせません。直ちに公表すべきです。技能実習制度による人権侵害、労働法令違反などを放置したまま、「人手が足りない」からと外国人の受け入れを増やすことは、あまりに安易で、極めて無責任という他ありません。

徹底審議を通じて廃案に

 低賃金と劣悪な労働環境をたださず、“とにかく外国人に頼る”というやり方自体が問われます。少なくない実習生は「もう日本に来ない」「人に勧めない」と語っています。人間を「使い捨て」にする国は、世界の信頼を失い、見放されるだけです。日本人の権利と働き方にも直結します。徹底審議を通じて問題点を明らかにし、廃案に追い込むことが重要です。


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