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2018年11月20日(火)

主張

入管法「データ偽装」

実態隠しの姿勢をあらためよ

 日本で働く外国人の受け入れ拡大に向けた出入国管理法(入管法)改定案をめぐって、審議の基礎となるデータの偽装や誤り、受け入れ見込み数の根拠のなさなどが次々と明らかになり、法案の根幹を揺るがす事態となっています。もともと同法案は、受け入れる分野・業種、規模が明記されていないことが大問題になっていました。国会審議の前提を欠いていることがいよいよ浮き彫りになっています。安倍晋三政権は、今国会の最重要法案と位置づけ、成立へ向けた動きを強めていますが、それは、許されません。徹底審議で廃案にすることこそ必要です。

過酷さを意図的に隠ぺい

 データの偽装や誤りが明らかになったのは、失踪した外国人技能実習生に対し法務省が昨年行った聞き取り調査結果の資料です。多くの外国人を無権利で働かせている実態が問題になっている外国人技能実習制度は、入管法改定案の審議で重要な論点となっており、法務省の調査結果を徹底的に検証・議論することは、外国人労働者の権利を守る上で不可欠です。

 基本的な資料の集計自体に偽りがあったというのですから、ことは深刻です。調査対象人数は2892人から2870人に訂正されました。政府側は当初、実習生の失踪理由の約87%は「より高い賃金を求めて」などと説明していました。実際はそのような選択肢はなく、それにあたるのは「低賃金」「契約賃金以下」「最低賃金以下」というもので合計は67・2%でした。「高賃金を求めて失踪するもの多数」と実習生側に問題があるかのように強調していた政府の主張はもはや成り立ちません。さらに訂正後資料では「指導が厳しい」「暴力を受けた」との割合も増加しました。人権侵害行為などは「少数存在」としていた政府の説明とも食い違っています。意図的な「改ざん」を疑わせます。

 改定案は現在の技能実習制度を温存し、多くの実習生を新たな在留資格に移すことを想定しています。その実習生の過酷な実態をごまかそうとする政府の姿勢は、外国人労働者の人権をないがしろにし、「安上がりな労働力」としかみなしていないことを示しています。政府はようやく調査原本にあたる「聴取票」の閲覧を始めましたが、隠ぺい体質は改めるべきです。

 根拠の不明確な数字は、今後の外国人労働者の受け入れ見込み人数の試算にあらわれています。政府は、見込み人数をなかなか示そうとしませんでした。野党の厳しい追及を受けて、渋々出してきたものです。介護、建設、外食など14業種で初年度に3万2800人~4万7550人、5年目に26万2700人~34万5150人などとはじき出しましたが、どういう技能の人をどういう職場で受け入れるかなどはっきりしておらず、「急場しのぎ」と批判が相次いでいます。ずさんな数字で取り繕い、法案を押し通すことは絶対に認められません。

財界言いなり政治でなく

 安倍政権が外国人労働者受け入れ拡大へ踏み出す契機になったのは、16年に経団連(日本経済団体連合会)がまとめた受け入れ促進の提言です。財界に号令をかけられ、悪法強行に突き進むやり方はあまりに異常です。外国人も日本人も権利が守られ、安心して働ける国にしていくことが重要です。


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