2018年11月21日(水)
日産ゴーン会長 巨額不正
犠牲にされた労働者
「50億円あれば派遣切り必要ないのでは」
関係者 怒りの声
会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)が東京地検特捜部に逮捕された日産自動車(本社、横浜市)。ゴーン容疑者は工場閉鎖、派遣切りなどで計約4万人の首切りを実行した張本人です。その裏では、約100億円もの報酬を5年間で得ていました。日産に雇い止めされた労働者ら関係者は、怒りの声をあげています。(遠藤寿人)
|
「日産は安い労働力で利益をあげていた。労働者を犠牲にして得たお金を、ゴーン氏は自分の都合のいいように使っていた」。日産自動車テクニカルセンター(神奈川県厚木市)で働いていた阿部恭さんは、憤ります。
阿部さんは、技術派遣として日産で働いていました。2009年2月、会長だったゴーン容疑者は、同年度中に約2万人の人員削減を発表しました。阿部さんも同年3月に雇い止めに。日産に直接雇用・正社員化などを求めて裁判を起こしました。
「日産は20年ぐらいの間に様変わりした。ここ数年間で労働者だけでなく幹部もかなり辞めている」と阿部さん。日産では昨年9月に、無資格者が新車の完成検査をしていたことが発覚。今年になっても排ガス測定で不正が発表されました。
阿部さんは批判します。「労働環境が悪くなり、働いている人がいい商品をつくろうと思わなくなる。それが内部告発に連鎖している。根底にある安い労働者を使って利益を上げていく体質は変わっていない」
東京地検特捜部によると、ゴーン容疑者は10~14年度の5年度分の有価証券報告書に、実際には約99億9800万円あった報酬を約49億8700万円と過少に記載。約50億円もの報酬を“隠して”いました。
日産派遣・期間工切り裁判弁護団の田井勝弁護士は、「50億円が本当にあるなら、派遣切りの必要はなかったのではないか。改めて怒りしかない」といいます。
「大企業が50億円もの報酬隠しを逮捕されたゴーン氏とグレッグ・ケリー代表取締役だけでやったとは思えない。組織的なものではないのか」
日産派遣・期間工切り裁判で、ゴーン容疑者を法廷に呼ぼうとしましたが、出てきませんでした。
「この間のさまざまな不正の問題でも、ゴーン氏は表に出て説明してこなかった。やりたいようにやって、弁明すべきところには出てこない。早く日産の体質を改善して解決してほしい」と田井氏は指摘します。
“コストカッター”の異名をとったゴーン容疑者は、1999年に最高執行責任者に就任し、「日産リバイバルプラン」を実行。2万1千人の人員削減と工場閉鎖を強行しました。
しかしゴーン容疑者は02年に総理大臣表彰をうけました。「企業改革に手腕を発揮した経営者」(官邸のホームページ)という評価です。
『ウィと言えない「ゴーン改革」』(05年)の著書があるジャーナリストの阿部芳郎さんは、こう語ります。
「経営の数字さえ上がれば優れた経営者だとして改革の中身を検証せずに政治家やマスコミがほめちぎった。リストラと非正規雇用の増大で政府の全面的なバックアップがあり、ゴーン氏に権力を集中して何でもできるようにした。改革の中身をよく見ないでゴーン氏を天までもちあげた結果だ」
安倍首相 ゴーン流を絶賛 06年
安倍晋三首相は内閣官房長官当時の2006年1月1日に産経新聞で、金融商品取引法違反で逮捕された日産自動車取締役会長のカルロス・ゴーン容疑者と対談し、次のように述べてゴーン容疑者の経営手法を絶賛していました。
「ゴーンさんが果たされた役割は大変大きいと思いますよ。日産はルノーと提携し、ゴーンさんが来て、その結果、会社は活性化し、存続し、雇用も守られた。世界中から能力のある人が日本に集まってきて、その能力を発揮するということが日本の豊かさにつながっていく。ゴーンさんの出現によりわれわれの認識は変わったように感じます」
ゴーン容疑者は、1999年に「日産リバイバルプラン」を掲げ、2万人以上の大規模なリストラをはじめとする経費削減を実施しました。安倍首相は「雇用も守られた」と全く逆の評価をしました。