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2018年11月22日(木)

主張

日産会長の逮捕

労働者・国民を欺いた責任重大

 巨額の報酬を受け取りながら有価証券報告書で虚偽の報告をしていた疑いでカルロス・ゴーン日産自動車会長が東京地検特捜部に逮捕され、会社の経費も不正に流用していたとして会長も解任されることになりました。20年近くにわたって日産の最高経営責任者(CEO)や社長、会長を歴任し、フランスのルノーや日本の三菱自動車でも会長を務める同氏の逮捕は各界に衝撃を与えています。「コストカッター」と呼ばれたほど労働者や下請け業者に「合理化」を押し付け、地域経済も破壊してきたゴーン氏の背信行為が、労働者・国民の怒りを呼ぶのは当然です。

実際の報酬は年20億円に

 ゴーン氏は経営不振に陥った日産の立て直しのためにルノーから派遣され、長期にわたって日産を代表してきました。その間、大量の人員削減や工場閉鎖、下請け企業の切り捨てなどを推し進め、2008年の「リーマン・ショック」の後にも派遣労働者を切り捨てるなど、大量の人減らしを強行しました。工場が閉鎖された東京都武蔵村山市などでは、地域経済にも大きな打撃を与えています。

 その一方でゴーン氏は巨額の役員報酬を受け取り、公表されただけでも、この数年は年間約10億円にも達しています。その巨額ぶりはかねて批判されてきました。

 東京地検特捜部の逮捕理由では、公表された報酬は一部で、11年3月期から15年3月期の5年分だけでも、実際には約99億9800万円受け取ったのに、有価証券報告書では計約49億8700万円しか報告しなかったとしています。事実なら年間の役員報酬は、公表の倍の20億円近くに上ります。

 有価証券報告書の「虚偽記載」は金融商品取引法に違反する犯罪で、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金(あるいはその両方)が科せられます。ゴーン氏はもちろん、日産の責任は重大です。

 さらに日産の内部調査では、ゴーン氏には会社の資金を私的に支出するなど、「複数の重大な不正行為」(同社の発表文)の疑いもあります。詳しくは今後、第三者委員会を設けて調査するとしていますが、子会社を通じて世界各地に高級住宅を購入し、家賃や飲食費などを日産に負担させていたといいます。事実ならこれも、背任などの罪に当たります。

 ゴーン氏の下で日産は最高益を記録したものの、「リコール」や安全検査違反が相次ぐなど、安全性軽視の経営がはびこりました。利用者をはじめ国民の命に関わる問題で、自動車メーカーとしてあってはならないことです。

 最高責任者としてもうけ最優先で労働者を使い捨て、人命軽視の経営をまん延させる一方、自ら私腹を肥やしたゴーン氏の行為は、経営者として絶対に許されません。それを許した日産の体質を含め、厳しく問われるべきです。

政府自身が積極的検証を

 見過ごせないのはゴーン氏逮捕以降の安倍晋三政権の対応です。

 自動車業界を監督する世耕弘成経済産業相は「第三者委員会で徹底して議論を深めてもらいたい」と日産任せで、金融商品取引法を所管する麻生太郎財務相は「個別の案件については答えられない」としか言いません。

 ゴーン氏の経営を持ち上げた歴代政権の責任はどうなるのか。徹底した解明と検証が不可欠です。


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