2018年11月22日(木)
論戦ハイライト
入管法改定案 法務省の資料隠ぺいを批判
藤野氏が深刻な実態告発
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日本共産党の藤野保史議員は21日、衆院法務委員会で、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改定案にかかわって、外国人技能実習生に対する最低賃金以下の賃金などの実態を追及し、開示されていない法務省調査を提出するよう要求しました。
失踪は使用者側の人権侵害
藤野氏は、失踪した外国人技能実習生への聴取票(個票)には、「残業代が出ない」「給料の未払い」「労働条件が事前の説明と違った」などのメモが書かれていることを示し、「実態が見えてきた。犯罪捜査とは何の関係もない。個票の国会提出を強く求めたい」と強調しました。
その上で、藤野氏は技能実習生の失踪原因を追及。法務省が訂正後に提出した資料では(1)「低賃金(契約賃金以下、最低賃金以下)」に不満を持ち、より高い賃金を求めて失踪する者が3分の2を超え、最も多い(2)長時間労働、暴力、帰国の強制等、受け入れ側の不適正な取り扱いによるものも存在する―としています。
藤野 (2)の「等」に「契約賃金以下」「最低賃金以下」を含むことは間違いないか。
和田雅樹入国管理局長 間違いありません。
藤野氏は、「失踪原因は人権侵害、労基法・最賃法違反など使用者側の問題が8割以上だ。圧倒的に使用者側に理由がある」と告発しました。
「意欲が低い」根拠示せず
失踪原因について、歴代法相らが「多数の者において、技能実習に意欲が大変低い」と繰り返し答弁してきたことにふれた藤野氏は、「多数とは、どういう根拠によるものか」と質問。和田局長は、「数的統計はとっていないが、口頭などによる報告が多数あったということ」と根拠を示すことができず、藤野氏は「意欲が低いと実習生を陥れるように描かれたものだ」と批判しました。
藤野氏は、技能実習生の失踪調査を始めるにあたって、法務省が2014年に出した通知について質問。通知では、監理団体や実習実施機関、他の技能実習生に聴取する「審査部門における措置」と、失踪した技能実習生本人を聴取する「警備部門における措置」の二つがあり、審査部門の報告が「意欲が低い」とされた根拠になっています。
藤野 審査部門の調査は、なぜ失踪したかを知る上で、極めて重要な資料だ。審査部門の資料を出すべきだ。
山下貴司法相 失踪にいたる経緯を調査・分析して防止し、制度を適正に運用するために調査したものだ。
まともに答弁せず、提出を拒否し続ける山下法相に対して、藤野氏は「実態がよくわかる資料だ。よっぽど出したくないということだ」と批判しました。
最賃以下70%、建設で暴力も
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藤野氏は、来日した実習生を受け入れ、通訳や住居の世話などもする監理団体の実態をただしました。技能実習制度では、監理団体は許可制で、非営利団体でなければならないと指摘し、法案の登録支援機関についてただしました。
藤野 登録支援機関は届け出制で、(許可制からの)後退ではないか。
和田局長 すべての届け出が認められるわけではない。
藤野 登録支援機関は、非営利団体でなくともよく、海外の派遣会社も参入できる。不正事案が増加しかねない。
藤野氏は、法務省資料で「最低賃金以下」が22人にとどまっていることに対して、聴取票を野党議員が合同で調査した結果、最低賃金以下が184件のうち70%にのぼると指摘しました。
また建設業では失踪率が他の業種の2倍になり、「暴力が原因としてあげられている」と告発。建設業の「特定技能1号」では、初年度受け入れ人数の98%を技能実習生で見込んでいることにふれ、「この実態に手をつけずして、何が人権擁護か」とのべ、実態の改善を強く求めました。