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2018年12月2日(日)

漁業法改悪案に対する紙議員の質問(要旨)

参院本会議

 日本共産党の紙智子議員が11月30日の参院本会議で行った漁業法改悪案に対する質問(要旨)は次の通りです。

 漁業法改悪案の第1の問題は、法の目的を変えることです。

 現在の漁業制度は、地元に居住し生活と労働を一体として、自ら海で働く生産者に優先して漁業権を与えています。

 なぜ、こうした制度をつくったのか。それは戦前の反省があります。戦前は、羽織漁師と言って都会に住みながら、船に乗らず出資者として利益を得る漁業者がいたのです。そこで、行き詰まった漁場関係を全面的に変えるために、漁業法の目的に「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用、漁業の民主化」を規定したのです。

 改悪案では、漁業者を「主体とする」ことも「民主化」も削除しました。何が不都合だと言うのですか。

 また新たに国と都道府県に「漁場の使用に関する紛争を防止するために必要な措置を講ずる」権限を与えました。漁民の総意に基づいて調整してきた浜の秩序に強権的に介入するのですか。

 第2の問題は、漁業権の優先順位を廃止することです。

 戦後の漁業制度は、漁業権を漁協に優先的に与えてきました。改悪案は優先順位を廃止し、「漁場を適切かつ有効に活用している」という基準に変えるものです。政府が漁業の成長産業化と称して企業による養殖産業の新規参入を掲げているもとで、「適切かつ有効に活用する」と知事が判断すれば、地元で営んできた漁業者の生業(なりわい)が維持される保証はないのではありませんか。ましてや企業が漁業権を手に入れれば長期的に漁業権を独占することができるのではありませんか。

 第3の問題は、漁業調整委員の公選制を廃止することです。

 漁業調整委員会の公選制は、戦後の民主化の目玉です。魚種が多く、多様な漁業が営まれていることから、漁場の調整は複雑で難しく、その調整をまずは漁協に与え、漁協のボス支配などでうまく機能しないときに漁業調整委員会が必要な指示をするという、2段階の構えで民主化を図ってきました。いまでも、漁場調整がうまく機能しない県では、漁業者の代表が選挙に立候補して当選し、漁業調整に尽力しています。

 公選制を廃止し知事による任命制に変えれば、行政の下請け機関になるのではありませんか。漁業者の被選挙権をなぜ、奪うのですか。

 第4の問題は、大型船のトン数規制を撤廃することです。

 遠洋・沖合漁業は、企業による漁船漁業が中心です。乱獲を防ぐためにとられてきた漁船のトン数規制をなくし、大型化を進めれば、沖合漁業と接する沿岸漁業の資源が減少するのではありませんか。また、遠洋・沖合の大型船を誰が監視するのですか。

 政府は、漁獲量配分による資源管理を導入すると言います。それ自体は必要ですが、今年、導入された太平洋クロマグロへの漁獲規制は、情報公開も不十分なまま、沿岸漁業者の意見も聞かずに強行されました。

 漁獲割り当ての配分に沿岸漁業者の意見を反映する仕組みは本法案にはありません。これで割り当てを強行すれば、存続が不可能になる沿岸漁業者が生まれ、沿岸漁業と漁協の衰退を招くのではありませんか。資源に最もダメージを与える国が管理する大規模漁業の漁獲量の抑制から進めるべきです。


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