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2018年12月4日(火)

国立大学運営交付金の削減

日本の研究力 危機

畑野議員 抜本増への転換迫る

 日本の研究力が危機にひんしています。特に運営費交付金を減らされ続けてきた国立大学では研究の継承さえ危ぶまれています。ところが財務省はさらなる改悪を提案。日本共産党の畑野君枝衆院議員は11月28日の文部科学委員会、29日の科学技術特別委員会でこの問題を連続追及し、運営費交付金の抜本増への転換を政府に迫りました。


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(写真)質問する畑野君枝議員=11月28日、衆院文科委

基幹運営費707億円減る

 「研究力に関する国際的地位の低下の傾向が伺える」

 毎年のように日本人のノーベル賞受賞がニュースをにぎわす一方、日本の研究力は2018年度版『科学技術白書』がこう指摘せざるをえないほど深刻です。国・地域別論文数で日本は2000年代初頭の2位から直近は4位に。優れた研究成果として国内外で引用された回数が各分野の上位10%に入った補正論文数も4位から9位に転落しました。

 畑野氏は科技特委で、日本の研究力低下の背景に04年の独立行政法人化後に運営費交付金が減らされたことがあると指摘。その額は1400億円以上に上ります。なかでも人件費に充てられる基幹運営費交付金が707億円も減らされた結果、86の国立大学のうち63大学で教員採用を抑制し、10年間で40歳未満の若手教員が1426人、安定的な承継教員が4443人減ったことを文科省に明らかにさせました。

 平井卓也科学技術担当相は、15年度以降は交付金額を維持していると答弁。畑野氏は、基幹運営費交付金は減らされ続けてきた事実を突き付け「長期的視点で研究できる若手教員ポストの減少が研究力低下の原因。学術の継承を困難にしている」と指摘しました。

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「再配分」で半数超減額

 国立大学にさらなる困難を持ちこんでいるのが運営費交付金の「再配分」(競争的資金化)です。政府は法人化の際「交付金は渡し切り」としていたのに、16年度から各大学にいったん渡した交付金から一定額を拠出させ、それを学部などの再編・統合といった「機能強化」の達成度合いで再配分する仕組みを導入。半数以上の大学が減額になっています。

 文科省は、再配分額を現在の100億円から来年度は400億円にするとしています。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は再配分の評価指標を就職率や外部資金獲得額などの成果を計るものに変え、再配分額を交付金の10%(約1000億円)に大幅に増やすよう求めています。

 畑野氏は文科委で、国立大学協会が短期的評価に基づく再配分の仕組みが中長期的な視点に立った改革を阻害していると指摘し、財政審の案を「財政基盤の弱い大学の存在自体を危うくし、ひいては我が国の高等教育及び科学技術・学術研究の体制全体の衰弱化さらには崩壊をもたらしかねない」と厳しく批判していることを紹介。「安定的に将来を見通せるように措置するのが本来の交付金の在り方だ」と訴えました。

 柴山昌彦文科相は財政審の案について「懸念は受け止める」と答弁。畑野氏は「懸念を払しょくするためにどう頑張るのか」と繰り返し迫り、柴山氏も「全力で頑張る」と答えました。

学費値上げ年10万円も

 運営費交付金が削減されるもと学費値上げに踏み切る国立大学が出てきています。来年度から東京工業大学と東京芸術大学が現在年間53万5800円の授業料を約10万円引き上げます。

 畑野氏は「学費と生活費のため1日8時間、週5日バイト」など学生の深刻な実態や、高校生から寄せられた学費への不安の声を紹介。東京芸大の学生が値上げ撤回へインターネット署名に取り組んでいることも示し「経済的理由から進学を断念することがないよう、運営費交付金を増額すべきだ」と強調しました。


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