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2018年12月6日(木)

主張

漁業法大改悪

拙速な審議での強行許さない

 安倍晋三首相が「70年ぶり」と強調する、漁業法の抜本的「改定」案をめぐる参院での審議が重要な局面を迎えています。

 戦後の漁業制度を根本から転換するにもかかわらず、衆院では、農林水産委員会でわずか4日、参考人質疑も含め実質10時間半という、きわめて短時間の審議で採決が強行されました。多くの漁業者に十分な説明もなく、審議の中で野党から次々に指摘される問題に、政府は「説明はきりがない」と言い放つありさまでした。

 漁業や漁村のあり方にかかわる重大な改悪法案を、参院でも強行するのは許せません。

漁業権付与基準は不明確

 法案の最大の問題は、沿岸漁業の漁業権を地元漁業者に優先してきたこれまでの仕組みを廃止し、知事の裁量で、地元外の企業に与えることを可能にすることです。養殖漁業などで力のある企業の参入・支配が広がり、漁業協同組合のもとで円滑に管理されてきた漁業権が分割されて、浜に混乱と対立が広がるのは必至です。

 政府は漁協関係者に「漁場を適切かつ有効に活用」していれば漁業権は維持されると説明しています。しかし、衆院の審議では、「適切かつ有効」の判断基準は「今後検討する」という無責任な答弁に終始しました。政省令等であれこれ定めても、知事の恣意(しい)的な判断による企業への漁業権付与を防ぐ保証にはなりません。

 地元漁業者優先の原則は、都会の企業などが浜を支配し漁村を荒廃させた、戦前の反省から生まれました。この原則のもとで漁業者が主体的に取り組んできたからこそ、漁場の利用調整や保全等ができました。漁業法の目的に「漁業者および漁業従事者を主体」「漁業の民主化」という規定が盛り込まれ、海区漁業調整委員会を公選制にしたのもその精神からです。

 ところが法案は、目的から「漁業の民主化」を削除し、海区漁業調整委員会を任命制に変えるというのです。現場で不都合なく運営されてきたルールをなぜ変えるのか、多くの漁業者の疑問や野党の質問に、政府は説得力ある説明ができませんでした。

 一方、法案は「水産資源の管理」の名のもとに、魚種ごとに漁獲可能量を設定し、個々の漁船ごとに割り当てる制度を導入します。しかし、割当量の配分に沿岸漁業者の意見を反映する仕組みはなく、禁漁を余儀なくされた場合の補償もありません。この夏、クロマグロの漁獲規制をめぐって大規模漁業を一方的に優遇し、小規模な漁業者が締め出された事例は、今回の法案が何をもたらすかを先取り的に示したものです。

 遠洋・沖合漁業では資源管理のためのトン数規制をなくし、大型化を進めています。中小零細漁業者が締め出され、取りすぎによる資源減少につながりかねません。

参院での成立阻止めざす

 今回の改悪案は、沿岸漁業の現場からではなく、新たなもうけ口として漁業・養殖業への参入をねらい、漁船の大型化で漁獲の拡大をめざす財界・大企業の身勝手な要求を背景としたものであり、財界主導の「規制改革推進会議」の一方的な主張の具体化です。

 「海を企業に売り渡すな」―参院での徹底審議を求め、今国会での成立阻止を目指して、この声を国会に集中しましょう。


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