2018年12月9日(日)
漁業法改悪案 紙議員の反対討論
参院本会議
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漁業法等一部改正案は、安倍総理が70年ぶりに「改正」すると公言したのに、わずか8時間45分で採決した政府・与党の強引な国会運営にも、強く抗議します。
改正案に反対する第1の理由は、現場を置き去りにしているからです。漁業法改正案の関連法案の改正は、47本にも及びます。それなのに漁業法の質疑は8時間45分でした。審議が尽くされたとは言えません。
政府が主催した説明会に参加した沿岸地区の漁協は77組合だけです。955ある漁協のわずか1割にも達していません。まさに現場置き去りです。
反対する第2の理由は、浜に対立と混乱を持ち込むからです。
目的から「漁業者及び漁業従事者を主体」と言う言葉も「漁業の民主化」と言う文言も削除し、漁業権の優先順位も漁業調整委員会の公選制も廃止すれば、漁業による利益を地域に広く行き渡らせる漁業法の骨格が骨抜きになります。
漁業権の優先順位を廃止することも重大です。水産庁に「水産政策の改革案」を出す前に、漁業権の優先順位の廃止を求める要望や意見書が出たのかと聞いたところ、水産庁長官は、「意見書は提出されていない」と答弁しました。それなのに何故、廃止するのですか。
漁業権の優先順位を廃止したうえで、「漁場を適切かつ有効に活用している」という新しい基準が作られました。一度、企業が漁業権を手に入れれば、「適切、有効」と言う基準にあえば、資本力を生かし経営展開を広げることができます。そうなれば、長期的に漁業権を独占することができるのではありませんか。
企業が良好な漁場を求めて参入すれば、沿岸漁業者が追い出される可能性があります。ましてや、財界から「漁業権は既得権益になっているとして法制度などを整理するよう」圧力をかけているもとで、「適切、有効」を基準にすれば、規制緩和論者が、その基準の緩和・廃止を求めてくるのは明らかです。
漁業調整委員会の公選制を廃止することは、漁業者の被選挙権を奪う暴挙です。選挙になれば、候補者が水産政策を掲げ、議論が広がります。公選制こそ、透明性がはかれる制度ではありませんか。
第3に、強権的な仕組みが導入されているからです。漁場計画に農林水産大臣の「助言」と「指示」を新たに明文化しました。政府が漁業の成長産業化を掲げ、企業による養殖産業の新規参入をかかげているもとで、漁場が企業本位に変質されることになります。
第4に、大型船のトン数規制を撤廃するからです。乱獲を防ぐためにとられてきた漁船のトン数規制をなくし、大型化を進めれば、沿岸漁業の資源が減少する懸念は払拭されません。
第5に、資源管理のために導入する漁獲割当制度、IQに沿岸漁業者の同意を得ることが明記されていないからです。今年、沿岸漁業者の意見も聞かずに導入した太平洋クロマグロへの漁獲規制の反省がありません。
規制緩和の流れに歯止めをかけ、浜と漁業者が主役になれる政策転換こそが必要であることを主張し、反対討論とします。