しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2018年12月9日(日)

日欧EPA、SPA承認案 井上議員の反対討論

参院本会議

写真

(写真)反対討論をする井上哲士議員=8日午前1時50分ごろ、参院本会議

 両協定は、TPP(環太平洋連携協定)や日豪EPAの審議で行われた連合審査も与党が拒否し、わずか4時間半の審議で与野党合意のないままに採決されました。あまりにもひどい国会運営です。

 日欧EPAは、安倍晋三首相自らが「成長戦略の切り札」「アベノミクスの新たなエンジン」と位置付け、EUに過去最大級の自由化を行い、大企業の利益を最優先して市場開放を推進します。

 「重要5項目」で米を除外したものの、82%の農産品の関税を撤廃し、パスタやチーズなどEUが強い分野でTPP水準以上の譲許を含めて関税の撤廃、大幅削減しました。

 EU試算では加工食品の対日輸出が51%(約1300億円)、そのうち乳製品の輸出は215%(約948億円)増加する一方、日本政府は国内生産減少額を最大203億円とし、実に4・5倍のかい離があります。EU試算は「前提や根拠が明らかでない」「日本と考え方が違う」と照会すらしません。TPPの際に内閣委員会決議で求めた「他の参加国における試算例や各県の試算例も参考として、より精緻になるよう、見直しに努めること」にも反します。

 政府試算は乳製品について、関税削減の影響で価格は低下しても国内対策で国内生産量は維持されるとし、今後の需要増等で国内生産量も増える可能性があるとしています。生産者のなりわい、生産地の将来に関わる死活問題にもかかわらず、都合の悪い事実にフタをし、相手側の試算を検証すらせず、自分たちのシナリオにもとづき「万全の対策」と繰り返すばかりでは日本農業を守れません。

 自由化推進の方向での再協議規定も盛り込まれており、譲歩の連鎖を引き起こすのは明らかです。国民の生存基盤である農業の破壊につながる本協定は到底容認できません。日欧SPAは、外交や安全保障も含む40分野にわたる協力を促進し、具体的な協力のあり方は「今後双方にて検討する」としています。「国家安全保障戦略」(13年12月)は、「国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場」を揚げ、NATO(北大西洋条約機構)、OSCE(欧州安保協力機構)と並びEUとの関係を強化するとしています。河野太郎外相は「本協定の下でのEUとの協力を通じて国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に積極的に寄与していく」と述べましたが、本協定が安倍内閣の戦略を後押しするのは明らかです。

 同協定が締結されていないもとでも、すでにソマリア沖の海賊対処活動で自衛隊と欧州各国軍との連携が図られました。SPAのもとで協力が進めば、自衛隊の活動の拡大につながりかねません。

 政府は、武器輸出三原則を撤廃し、英仏独伊と装備品・技術移転協定を締結し、スウェーデンと交渉中です。EUで加盟国間の装備協力に域外国を加える動きが進んでいることを踏まえれば、装備協力の拡大に直結する危険もあります。安倍内閣の「積極的平和主義」と称した安全保障分野での協力の具体化に「白紙委任」は断じて与えられません。


pageup